nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

最近読んだ新書に関する読書メモ(『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで』『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』)

最近新書をいくつか読んだのですが、とくに面白かった・勉強になった3冊について読書メモを残しておこうと思います。

小島庸平『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』(中公新書)

いわゆる消費者金融の盛衰について、その誕生から現在に至るまでを丹念に解説した1冊です。公平中立に消費者金融を分析していて、消費者金融を色眼鏡で見ていた自分としては、驚くことも多かったです。自分がものごころついたころに消費者金融の過酷な取り立てが問題になっていて、そのイメージがあったんですよね…。基本的には経済史的な観点が中心ですが、ジェンダーや民族の問題にも踏み込んでいて、社会科学的な研究がなされているといってよいでしょう。あと、単純に読み物として大河小説を読んでいるようでとても面白かったです。

柿沼陽平『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで』(中公新書)

秦漢時代の庶民はいったいどのような1日を送っていたのかを膨大な資料から抽出しまとめた本です。語り口がユーモラスですが、出典が全体の40%程度を占めるという硬派な部分もあります。古代中国というと英雄史ばかりがピックアップされるので、庶民史を中心にまとめた本書は珍しいかも。これも読み物として面白かった類の1冊です。

大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)

第二次世界大戦というと、日本ではアジア地域がクローズアップされがちですが、実をいうともっとも悲惨な戦いとなったのは独ソ戦で、ドイツ側は1000万人程度、ソ連側は3000万人近い犠牲者を出しています。ではなぜ独ソ戦はこのような史上まれにみる凄惨な結果となったのでしょうか? 本書では作戦の展開や意思決定のプロセスを丹念に読み解いて、その理由に迫ろうとします。読んでいて印象に残ったのが戦争の性質の変化です。通常の戦争であれば地政学的目的を達成すれば終わりですが、ドイツの旗色が悪くなるにつれ、敵を殲滅し、食料や資源を獲得する目的が強くなっていきます。とくにナチスドイツにはゲルマン民族こそ支配階級であるという世界観になりたっていることもあり、スターリングラード攻防戦や占領地での虐殺のような明らかに軍事的合理性を欠いた行動が目立つようになります。もっともソ連ナチスドイツに対し、滅ぼすべき敵として残虐非道にふるまいます。ソ連共産主義国家ですが、ある種のイデオロギーを強く信じているという点ではナチスドイツと変わりなかったわけです。戦争は外交目標を達成する一手段でしかなく、そのレベルの合理性を欠くふるまいには至らないはずですが、そうはならなかった独ソ戦の経過を読んでいると、2022年のロシアによるウクライナ侵攻についてもうすら寒いものを感じずには得ませんでした。