nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

読書メモ:『ルポ路上生活』『常識として知っておきたい裏社会』『ポストモーテム みずほ銀行システム障害 事後検証報告』『失敗の本質』『頼朝と義時 武家政権の誕生』

2022年のゴールデンウィークも折り返しという今日この頃。長期連休で時間があるということで、ラップトップPCの整理をしていたところ、読書メモを発見。せっかくなのでお焚き上げしておきます(´・ω・`)

國友公司『ルポ路上生活』(KADOKAWA)

ルポライターである筆者が東京オリンピックがあったころに2か月間実際にホームレス生活をしてみたというもの。筆者は以前に西成で潜入取材した本を出していて、これが面白かったので、本書を手に取ったのですが、とても興味深く読み終わりました。意外だったのは、東京は炊き出しが充実していて、食べ物には困らないどころか、むしろ食べきれないほどということ。また炊き出しにならぶのはホームレスより生活保護受給者のほうが多いとか、冬は支援団体が毛布や寝袋をくれるので、実は冬より夏のほうがつらいとか、実際に体験した人でないとわからないことが多く記載されています。

懲役太郎、草下シンヤ『常識として知っておきたい裏社会』(彩図社)

暴力団員のVTuberと裏社会に精通したライター・編集者の対談本。2022年最新の裏社会事情紹介ということで、下世話な好奇心を満たせました。本書でも述べられていますし、一般にも言われていることですが、現代は表社会と裏社会の境界があいまいになりつつあります。まっとうに生きているつもりでも、ふとした拍子で裏社会や反社会勢力に接する可能性があるわけで、それを見越して知識をつけておくことは悪いことではないのかもしれません。

日経コンピュータ『ポストモーテム みずほ銀行システム障害 事後検証報告』(日経BP)

IT業界のサグラダファミリアとまで呼ばれ、完成まで8年もの年月と35万人月を費やしたみずほ銀行の基幹系システムMINORI。2019年に全面刷新に成功し、鳴り物入りで投入されたMINORIですが、2021年になって1年に11回のシステム障害が発生します。日経コンピュータはこのMINORIがサービスインした際、MINORIよいしょ本を書いていたのですが、本書はそれの反省会のような形になっています。タイトルにポストモーテム=検死とつけたのもそのあたりが理由でしょうか。読んでわかるのは、MINORIそのものの品質が悪いのではなく、それを使うみずほ銀行の文化や風土や組織の問題であるということ。悪しき企業文化からは悪しきシステム・ソフトウェアしか生まれないということですね。

戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎『失敗の本質』(ダイヤモンド社)

名著だとは知ってはいたものの、なかなか手が伸びなかった1冊。一念発起して読んでみましたが、噂にたがわぬ名著でした。大きく2部構成で、前半の第1章では太平洋戦争における戦闘のうち、日本軍が大きく敗北した6つの作戦を分析し、なぜそれらが失敗に終わったのかを追求します。重要なのは後半の第2章と第3章で、前半部分の分析結果をもとに、旧日本軍の戦略上の失敗と組織上の失敗を浮彫にしようとします。一体どのような失敗があったのかについてはぜひ読んで確かめてほしいのですが、組織の中で働いた経験がある人であれば、かならず直面したことがあることばかりが記載されています。旧日本軍が現代日本にもリンクする、これが本書の名著たるゆえんでしょう。個人的には、日本軍の失敗は日本特有のものというよりは、組織であればおちいりがちなものという感想をもちました。ただ悲劇があるとすれば、よりにもよって軍隊がそういう失敗を抱えてしまったということでしょう。

呉座勇一『頼朝と義時 武家政権の誕生』(講談社現代新書)

いろいろな意味で有名な筆者の最新新書で、源頼朝北条義時を中心に、鎌倉幕府成立の軌跡を描いた1冊になります。話の中心となるのは武家政権と朝廷の関係性に対する多角的な分析です。また草創期の2人を中心に据えているといっても、伝記的な記載はやや控え目。歴史資料や各種学説に依拠しつつ、そこに筆者の解釈を加えるというスタイルで話は進みます。要は史実に忠実であろうとしているわけで、『平家物語』や『吾妻鏡』のような物語的な面白さはないものの、知的好奇心は満たされた感じがします。