- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1985/02
- メディア: ペーパーバック
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
北方謙三というとハードボイルド作家、あるいは歴史作家というイメージがありますが、実はデビューは純文学。1970年(23歳)に『明るい街へ』(未読)を純文学誌「新潮」に発表し出版デビューを果たしています。
- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1999/11
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る
しかし純文学作家としてはさっぱり売れず、大衆文学に転向。そして現在に至るのですが、大衆文学作家になって初めて著した作品が本作『弔鐘はるかなり』になります。いうなれば本作は北方謙三の第2のデビュー作です。
さて読んでみると、デビュー作とあって、やや散漫な印象でした。話の筋が混乱気味だったり、短い作品に詰め込め過ぎていたりと、「処女作あるある」に陥っていなくはない。ただ作者は本作執筆に至るまで、純文学作家としてのキャリアを10年近く積み上げています。つまり基礎はしっかりしているので、表面上はとっちらかっていても、芯のところは非常に骨太。
だから結構読めてしまう。デビュー作や処女作と名打たれた作品によっては、本当に読むに堪えないものもあるので、それらと比べると充分及第点。むしろ世に存在するつまらない小説よりずっと面白いし、読む価値があると思います。
ほめているのか、けなしているのかわからなくなる前に、もう少し具体的な感想に触れておきます。
北方謙三のハードボイルド作品として、よく挙がる作品が『檻』。しかし個人的にはこれが苦手――って、同じようなことを書いた記憶が……。探したところ『渇きの街』について書いた記事でした。こちらはわたしの好きな作品のひとつです。
閑話休題。『檻』が苦手なのは、妙にメロドラマ的だから。感傷的過ぎるのです。もっとタフな物語でいてほしい。その点本作は非常にタフ。やや乱暴といえなくもないですが、冷たく心の炎を燃やすひとりの男の生きざまがストイックに描かれていました。
総評としては「非常によかった」。自分の好きな系列のハードボイルド作品でした。
ちなみに北方謙三のハードボイルド処女作が本作であることは繰り返し述べてきたとおりですが、では次の作品は……? 調べたところ『逃れの街』でした。
- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1985/01
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
Amazonレビューを見る限り、非常に評判がいい。ううむ、読みたくなってきた。こういう出会いがあるのも、読書の面白いところですね。