nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

S.J.ローザン『冬そして夜』読了。

冬そして夜 (創元推理文庫)

冬そして夜 (創元推理文庫)

 解説(山崎まどか)によると

ニューヨークのチャイナタウンで育った年若い中国系アメリカ人のリディア・チンと、アイルランド系の中年男性、ビル・スミス。二人の私立探偵が交互に主役をつとめ、互いに助けあいながら事件を解決していくこのユニークなシリーズも、これで八作目。この 『冬そして夜』は二〇〇三年MWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長編賞を受賞し、リディア&ビルシリーズの記念碑的な作品になった。(p.584)

 物語全体のテーマとなっているのはいわゆる「スクールカースト」。アメリカンフットボール部のジョックとその恋人たるチアリーダが頂点にいて、ナードだったりギーグだったりは虐げられている――というあれですね。詳しいことはWikipediaの記事「ジョック」を参照のこと。意外と充実していて勉強になります。

 アメリカの社会や文化を語るうえで「スクールカースト」の存在は欠かせないとよくいいますが、本作に描かれるそれは極めて強烈です。「カースト」というにふさわしい学校文化とそれを肯定する地域社会の関係性がありありと描かれています。

 小説的にデフォルメされているとはいえ、こういう状況下にアメリカの学生はいるのか……そりゃ「コロンバイン高校銃乱射事件」が起きても不自然ではないというかなんというか。ちなみに本作は明らかに「コロンバイン高校銃乱射事件」に影響を受けていますが、ねたばれのため詳しい内容は伏せておきます。

 本作はアメリカの「スクールカースト」をめぐる小説ですが、最近では日本でも同様のテーマを扱った作品が増えてきていますね。特に話題になったのは朝井リョウ桐島、部活やめるってよ』でしょうか。映画も出来が良かったみたい。

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

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桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

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 あと新書では鈴木翔『教室内(スクール)カースト』が注目されていましたね。

教室内(スクール)カースト (光文社新書)

教室内(スクール)カースト (光文社新書)

 まあ知っているだけでどれも読んでいないという。小中高と下位カーストに居続けた身としては、読むとつらい思いでが呼び起されそうで、びびっております(´・ω・`)