nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

池上純平『完全SIer脱出マニュアル』を読んだ

完全SIer脱出マニュアル

完全SIer脱出マニュアル

ここ2か月ぐらいは出張&ホテル暮らしが続いていて、月曜日の午前中に出張先に新幹線で向かい、平日はホテル暮らしをして、金曜日の夜中に東京へ帰ってくるという生活をしています。この生活は精神的肉体的に疲労がたまって、なかなかにストレスフルなのですが、それはさておき、出張生活の新幹線で読んだのがこの『完全SIer脱出マニュアル』です。筆者はインターネットポッドキャスト『しがないラジオ』のパーソナリティのひとりで、もともとは同人誌として出版したものを加筆修正して商業出版したとのことです。わたしは同人誌版を有していないので、その観点からのレビューはできません。あと「しがないラジオ」ですが、最近は忙しくて聞けていません……。出張生活が悪いんや(´;ω;`)ウゥゥ

本書は全5章構成ですが、もっとも中心的なのは第3章で、章名はタイトルと同じく『完全SIer脱出マニュアル』。もともとは鶴見済完全自殺マニュアル』のパロディだと思いますが、内容的にはまさにマニュアルといっていいものになっていて、「いわゆるWeb系のエンジニア・プログラマに転職するにはどうすればよいのか」について、きわめて具体的かつ事細かに記述されています。いわゆるWeb系の世界への入り方にスポットを当てているというのは面白いですし、それをここまでわかりやすく詳細にまとめている本はかなり貴重なのでは?

わたしも転職活動をしたことがあって、その最中体調を崩し、結局現職にとどまっているという過去を持つのですが、中途の転職活動というのは、いわゆる新卒の就活に比べると、わかりやすいプロセス・メソトロジーがなく、手探りで進めていく感が強くあります。よくいえば自由、悪くいえば何から手をつければいいかわからんというのが転職活動です。そういう世界において少なくともWeb系への転職を目指すならば、本書は心強いマニュアルになってくれると思います。

タイトルからすると「現職がSIerのSEで、Web系エンジニアへの転職を考えている層」向けの本に見えますし、実際そこがメインターゲットだと思いますが、それ以外にも

  • プログラマ・ITエンジニアとして就職を考えている学生
  • SIerの中でのキャリアの積み上げ方に悩んでいるSE
  • 非技術系だがIT技術者の採用や採用広報に携わっている人

などが読んでも、実りある内容になっていると思います。200ページ程度と比較的読み切りやすい分量になっているので、変な話ですが、片手間に読んでも問題ないかと思います。

心配があるとすれば、内容が個別具体的過ぎて、将来的に陳腐化しないかということ。Web系の世界は業界自体が年若く、はやりすたりが激しい世界だとよく耳にします。そういう流れのはやい世界のことですから、本書の内容のがすぐに役に立たなくなる可能性はあります。ただ2019年現在のスナップショットととらえれば、ある程度普遍性を持つのかな? まあ杞憂のような気がしますね(´・ω・`) 仮に3-4年後の未来に本書を読むとすれば、本書の内容=2019年現在のスナップショットということを前提に、読者が自分で内容を補完すればよいので。

個人的には第4章・第5章あたりも面白く読みました。内容としては「Web系エンジニアにはどのような職種があるのか」「Web系エンジニアはどのようにキャリアを積んでいくのか」というもので、タイトルにあるとおり、やはり「マニュアル」らしく、具体的かつわかりやすく記述されており、どこからでも手を付けやすいと思います。まずわたしがその手のことにまったく疎くて、勉強になったというのがまず第1。また読んでいて強く感じたのは、この第4章・第5章の暗黙の前提として「自分でキャリアの方向性を決め、その方向に向かって自己研鑽する」という思想があるのではないかということ。自己のキャリアデザインについて、自己決定&自助努力し、そして結果については自己責任を負うというのはある種当たり前なのですが、わたしの人生を振り返ってみると、そんなことはまったく意識せず、のほほんと生きてきたわけです。

わたしは自称外資系のおおきめSIerに勤務しているのですが、キャリアについてはいろんな話を耳にします。ソフトウェア製品のプリセールスとして入社したのに、思い付きでSEに転向させられたり、人質要員として保守運用にひとり客先常駐させられたり、転勤を拒否したら出張生活を命じられ、仕事内容もソフトウェアのテクニカルサポート業務になったり--全部わいのはなしや(´・ω・`) 要はSIerのキャリア・働き方はどうしても会社都合、ひいては顧客都合に引っ張られがちということです。それをある種当たり前というか、しょうがないものとして受け入れてきたのですが、ただ会社が敷いたキャリアに乗った結果のしりぬぐいをするのはほかならぬ自分です。直近で転職を行わないにしろ、もうちょっと自分のキャリアについて考えて、自ら行動するのもよいかなとよんでいて思った次第です (わたしの抱いた感想は、第4章・第5章を書いた筆者の意図とは異なるとは思いますが)