nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

広瀬正『マイナス・ゼロ』読了。

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

 まえまえから気になっていた作品。最近ようやく機会があり、手に入れることができました。噂通り面白かったです。手が止まらないとはこのことですね。すいすい読んでしまいました。

 それにしても論理的な作品でした。本作では「タイムトラベルにともなうパラドックスは自己収斂する。すなわち過去改変はごく小規模であれば可能である」という立場をとっているのですが、それが物語を一気通貫しています。

 一方で非常に情緒的な作品でもありました。戦前から戦後にかけての東京の変化がいろどりゆたかに描かれています。とりわけ都市風俗の書き込みぶりは並大抵ではありません。おそらくかなり綿密な主取材調査にあたったのでしょう。

 単に小難しい理屈をこねくり回すのではなく、一方で物語としての面白さを優先するあまり、理屈をおろそかにするのでもない。そのふたつが同居する素敵な作品だったと思います。これだけの傑作はなかなか得難いでしょう。

 ――とここまで書いておきながら、実はわたくし、SFに関しては全くの門外漢でございます。

 以前冒険小説については素人だと書いた記憶がありますが、SFはそれ以上。門外漢の中の門外漢。どの程度かというと「タイムトラベル」と聞いて真っ先に思い出すのが、ウェルズ『タイムマシン』。というよりそれ以外が思い出せない……。ハイライン『夏の扉』もそうだったかしら?

タイムマシン (光文社古典新訳文庫)

タイムマシン (光文社古典新訳文庫)

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

 要するに「素人が適当なこといっていたらすみません」ということです。とはいえわたしは面白く感じたということについては再度述べておきます。「自らの感性を信じ抜く」そういうこともきっと大事です。

 追記:あとでしらべたところ、冒険小説に関してうんぬんかんぬん述べたのはラングレー『北壁の死闘』の記事においてでした。