nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

ラングレー『北壁の死闘』読了。

北壁の死闘 (創元ノヴェルズ)

北壁の死闘 (創元ノヴェルズ)

 山岳小説、もとい冒険小説の傑作――らしい。

 実のところ、わたしは冒険小説というジャンルにおいては「よい」読書家ではありません。

 たとえば探偵小説であれば、その作品をめぐる文脈ごと読みます。「xxという理由で革命的だ」とか、「現在では陳腐化したxxをうみだした」とか――要するにジャンルごとひっくるめて楽しむわけです。

 対して冒険小説となると……そういう態度はすっかり消滅。「なんとなく面白そうだ」「立派な賞をとった」「表紙の絵が気に入った」などなど、ミーハーな理由で読み始めます。しかもそこからジャンルの奥深くへ掘り下げていかない。その作品を読んだだけで満足してしまうのです。

 そういうわけで『北壁の死闘』が「ジャンル史的にどういう価値がある」とか、「どういう時代背景のもと書かれた」とか、あるいは「筆者がどどういう人物だ」とか、そういう事情はさっぱりわかりません。

 ただそういう「御託」抜きでも楽しく読めました。今風にいうところの「普通に面白かった」というやつですね。男たちの苦闘や友情、あるいは淡い恋愛模様など、読者の胸を打つ要素がてんこもり。それをダイナミックに描きだす物語構造も一級でした。