nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

最近読んだ翻訳小説: 『暗黒街の女』『ニューヨーク1954』『シスターズ・ブラザーズ』『秘密の花園』

最近読んだ小説のうち、翻訳小説について、いくつか読書メモをブログに残したいと思います(´・ω・`)

ミーガン・アボット暗黒街の女』(ハヤカワ・ミステリ)

暗黒街の女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

暗黒街の女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

語り手である若い女が女貸元であるグロリアと出会い、その私設秘書として裏社会で名前を知られていくのだが、ろくでもないギャンブラーと恋に落ちてからは人生を一転させていく――1960年代を舞台としたノワール小説で、ストーリの転がり方もさることながら、キャラクターの書き方が上手。必ずしも多くを語るタイプの書き方ではないにもかかわらず、登場人物たちの心情がびしびし伝わってきて、魅力的な小説だと思いました(小並感)

ディビッド・C・テイラー『ニューヨーク1954』(ハヤカワ文庫)

ニューヨーク1954 (ハヤカワ文庫NV)

ニューヨーク1954 (ハヤカワ文庫NV)

タイトルの通り、1954年のニューヨークを舞台としたノワール作品です。歴史考証がきちんとなされているかどうかは別として、1950年代に発表された小説に近づけてはいます。たとえばそのころの小説には、共産主義への恐怖を表す表象として同性愛を利用することが多々ある、つまり「異常者=共産主義者=同性愛者」という(現代的な価値観からすれば)ありえない図式が頻繁に用いられるのですが、そのあたりの「感じ」を効果的に利用しているように感じました。雰囲気づくりが非常に上手な作品だと思います。

パトリック・デウィット『シスターズ・ブラザーズ』(創元推理文庫)

シスターズ・ブラザーズ (創元推理文庫)

シスターズ・ブラザーズ (創元推理文庫)

ブッカー賞の最終選考に残るなど、英語圏では「おかたい」文学として評価されたにもかかわらず、日本では創元推理文庫で出版されたがためにミステリジャンルで高く評価されたという、ちょっと奇妙な小説です。本書の内容を一言でいえば、シスターズ兄弟の珍道中、あるいは股旅物。全般に血の気が多く、ブラックなユーモアにあふれているのですが、しかし一方で妙にペーソスを感じさせる面もあって、独特の読了感を味わえる作品でした。

バーネット『秘密の花園』(光文社古典新訳文庫)

秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)

秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)

日本だと少女小説や児童文学として受容されていることから、これまで何となく避けていたのですが――超面白かった(´・ω・`) わがままでこしゃまくれたメアリがイギリスの片田舎の豪邸で、子供らしさを取り戻しながら、周囲を巻き込んでいく。これが「お涙頂戴」というか、非常に感動的。また自然や風景の描き方が簡潔ながら、やさしさを感じられ、読んでいて爽快な気分になりました。なんでも読んでみるもんですね(´・ω・`)