nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』読了。

 熱心なファンの多い東欧SFの古典ですね。ちなみにわたしが読んだのはロシア語からの重訳版(原著はポーランド語)。調べたところポーランド語からの訳も文庫本で出版されているようです。

 一般的に完訳が出版された場合、それ以前の訳(重訳・抄訳など)は絶版になる傾向がありますが、本作に関しては両方手に入るというわけです。こういう判断になったのも重訳版が名訳で長らく親しまれてきたからでしょう。

 こういうケースはまれにあって、たとえばレイモンド・チャンドラーの長編作品。長らく名訳として君臨したのが清水俊二によるものですが、原著と読み比べてみるとまったくの「抄訳」。村上春樹による「完訳」も出版されつつありますが、やはり清水訳のほうにファンが多いイメージがあります。事実清水訳もまだ書店においていますしね。

 閑話休題。    本作は人知を超える生命体「惑星ソラリス」と人類との交流そして失敗を描いた作品です。基本的に難解なところもなくすいすい読めました。東欧SFというと小難しいイメージがあったので、これは意外でした。

 さて本作を読んで感じたのは、「惑星ソラリス」がまるで現代のコンピュータのようだということ。最近「2045年問題」とかいって、コンピュータが人間の知能を超える時代がすぐそこに迫っているということが叫ばれいます。

 「惑星ソラリス」は答えたことには完璧にこたえてくれるし、どんなものでも外見上は完璧に作ってしまう一方、中身については中途半端にしか再現できない生命体としてあらわれます。意思があるようなないような、成熟しているような未成熟なような、そういう不思議な「生命体」。これはまさしくわれわれ人類が近い将来遭遇するコンピュータの姿に見えて仕方ないのです。

 はたして未来のわれわれは技術的特異点を突破したコンピュータとどのように付き合うのでしょうか? 本作は人類と「惑星ソラリス」との交流の失敗がテーマですが、とはいえラストはポジィティブさに満ち溢れています。 われわれの未来もそうなればよいですね。    わたしはコンピュータやプログラミングが好きで、IT業界の日系企業に新卒で就職しようとしています。つまり将来「惑星ソラリス」と仕事をする、あるいはそれを利用してビジネスを作るという可能性が高いのです。だからこそ本作を描いた世界が骨身にしみて感じられるのかもしれませんね。