- 作者: アントニイ・バージェス,Anthony Burgess,乾信一郎
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/06
- メディア: 文庫
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映画は見たことないのだけれど……
wikipediaによると、この作品は作者の意図に反し、最終章が削除されて出版されたらしい。
私が読んだのは中古で拾った文庫なので、その最終章が省かれたものからの翻訳のようです。
確かに訳者あとがきを見ると
なお、この作品の初版本には第三部の終りにもう一章(十二ページほど)あるのだが、その後の新版を見るとその一章が省かれている。おそらく作者があとで考えて省いたに違いないと思われるので、本版も新版の方によることにした。(p.268)
とあります。
ちなみに、削除された章を含めた「完全版」の翻訳はこちら。
時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)
- 作者: アントニイ・バージェス,乾信一郎
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/09/05
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しかし、翻訳の初版が1977年、完全版が2008年ということなので、かなりの間、不完全版で親しまれたことになりますね。
有名な映画版も不完全版を基に製作されたということなので、なかなかややこしい。
ただ、20-30年前ぐらいまで、翻訳小説業界というのは結構おおざっぱ。
- 誤訳は日常茶飯事で
- 完全版のふりをして抄訳だったり
- 作品上重要な記述がすっ飛ばされていたり
- 挙句原作と話の展開が違ったり
などなど、めちゃくちゃな話が山ほどあります。
しかも、そんな状態の翻訳を通して、作品やせりふが有名になることも。
なんというか、本当にめちゃくちゃですな。
もっとも、最近は権利意識がはっきりしてきたせいか、そういうことはなくなったようですが。
そういうわけで『時計仕掛けのオレンジ』は原作の段階で削除されていたようですが、削除されていたからといって、読者側はあまり気にする必要はないと、個人的には感じます。
作者は腹立たしいと思いますが。
あと、完全版はあとあと読むつもりです。
金をけちるからこういうことになるのだ。
閑話休題。
読んでみての感想としては、「思春期に読んでいたら影響されてただろうな」というところ。
あらゆる出来事が管理される中で、生きがいが見出せず、暴力に走り回る少年――こう書くと、青春小説みたいですね。尾崎豊風というかなんというか。
作者が本当に描きたいのは管理社会の恐怖のはずですが、その発現として不良少年を使うところが非常にうまい。
ここが名作の名作たるゆえんではないかしら。