nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会1』読了。

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

 安楽椅子探偵ものの名作ですね。翻訳は全5巻。すべて絶版になっていないということから、その人気ぶりがうかがえます。

黒後家蜘蛛の会 2 (創元推理文庫 167-2)

黒後家蜘蛛の会 2 (創元推理文庫 167-2)

黒後家蜘蛛の会 3 (創元推理文庫 167-3)

黒後家蜘蛛の会 3 (創元推理文庫 167-3)

黒後家蜘蛛の会 (4) (創元推理文庫 (167‐5))

黒後家蜘蛛の会 (4) (創元推理文庫 (167‐5))

黒後家蜘蛛の会〈5〉 (創元推理文庫)

黒後家蜘蛛の会〈5〉 (創元推理文庫)

 さて今回読んだのは第1巻。収録短編は以下の通り。

  • 『会心の笑い』
  • 『贋作(Phony)のPH』
  • 『実を言えば』
  • 『行け、小さき書物よ』
  • 『日曜の朝早く』
  • 『明白な要素』
  • 『指し示す指』
  • 『何国代表?』
  • ブロードウェーの子守歌』
  • 『ヤンキー・ドゥードゥル都へ行く』
  • 『不思議な省略』
  • 『死角』

 ニューヨークの高級レストランに集まった「黒後家蜘蛛の会」のメンバーたちは、めいめいゲストから提示された謎を推理するのだが、いつも真相を言い当ててしまうのは給仕のヘンリーだった――どの短編も基本的に同じ構成で、しかも謎自体は正直他愛もないものがほとんど。しかしどの短編も非常に魅力的なのです。

 まずはキャラクターが素敵。化学者、数学者、弁護士、画家、作家、暗号専門家――様々なバックボーンをきちんと書き分けられており、しかも全員がキャラ立ちをしている。全体として嫌味もなく、実際の推理パートに入る前のよもやま話が非常に面白かったです。

 もうひとつ本作の魅力となっているのは作者アシモフの解説にほかなりません。本作は各短編ごとにアシモフによる短い解説がつけられているのですが、なぜかこれが癖になってしまいます。言葉には表せない妙な面白さに満ちています。解説を読みたいがために短編を読む――というと少し大げさですが、解説がないと本作の魅力が半減するのは間違いないと思われます。

 総評としては古き良きミステリといった感じでしょうか。寝る前にベッドに寝転がりながら1日1編づつ読んでいく――そういう読み方をしたくなるような作品でした。

 アシモフといえばSFというイメージが強いのですが、実はミステリ分野でも有名だったりします。この『黒後家蜘蛛の会』シリーズはその代表例ですね。あとは『鋼鉄都市』あたりをミステリに数える人もいますね(わたしは読んだことはありませんが)ミステリにしろSFにしろ求められるのは緻密な論理性ですから、一見遠いジャンルに見えても実は親戚同士なのかもしれません。

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

 ちなみにSFとミステリの融合でいうと、個人的にはジェームズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』が好きです。こちらは『黒後家蜘蛛の会』シリーズとは違って、SFらしい雄大さに満ち満ちています。

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)