nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

浅山太一『内側から見る創価学会と公明党』(ディスカヴァー携書)

本書は創価学会公明党の関係性を、どちらかといえば創価学会の視点から分析したものになります。本書によると、創価学会公明党を応援することを明示的に支持するようなことはなく、また学会員の間でも公明党を応援する動機や理由に統一的な見解はないそうです。要は学会員は必ずしも公明党を支持するいわれはないにもかかわらず、かれらは日本人の平均からすれば熱狂的ともいえる熱量をもって公明党を応援しています。いってみれば「創価学会公明党の間に流れるあいまいな関係性」がどのように形成され、変遷し、そして現在に至るまで維持されているのか。聖教新聞創価学会会長の発言や講演などを題材として、本書はその答えを洗い出していきます。

もちろんその答えはそれほど単純ではありません。少なくとも新書1冊にまとめねばならないほどには複雑な問題です。教義の観点から公明党の支持をどのように正当化するのか。政治活動の自由や政教分離の原則に抵触しないよう、どのようにして信者を公明党支持に向かわせるのか。本書は膨大な資料からそうした問題をひとつひとつ整理し、創価学会戦後民主主義とは相反する存在である宗教政党を成立せしめたのかを明らかにしています。また「下部構造が上部構造を規定する」というマルクス主義的な発想になじんでいると、支持母体/圧力団体である創価学会の側が公明党を一方的にコントロールしているかのように思いますが、やはりそれほど簡単な話ではありません。宗教政党という政治的社会的にナイーブな存在を抱えることによって、創価学会の側が変質していくということも当然あり得ます。本書はその双方向性にも自覚的で、ページ数を割いてじっくり議論を進めています。

創価学会公明党の関係については、反学会的な立場による陰謀論めいたものか、学会御用の出版社や文化人による礼賛的なもののどちらかばかり。本書のように社会科学的な視点から冷静に見つめなおしたものは少ないように思います。また政治と宗教の関係というと、どちらかといえば政治学の観点から議論されることが多く、どうしても政治側の影響ばかりが取りざたされがち。本書のように社会学の観点から宗教側にスポットライトを当てたものは珍しいのではないでしょうか。あと単純に自分の知らない世界のことが知れたのもよかったですね。不思議なことに創価学会とはあまりかかわらない人生を送ってきており、教科書的な知識を除くと、創価学会について知っていることといえば、創価大学が八王子の山奥にあることぐらいだったので(´・ω・`)