nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

最近の読書メモ(新書編):『ハプスブルク帝国』『応仁の乱』『『宗教国家アメリカのふしぎな論理』

もう年の瀬という事実を直視できない(涙)。とはいえ大量の読書メモを来年には持ち越したくないということで、とりわけ新書に限定して、読書メモをブログ記事にしておきたいと思います。供養みたいなものですね(´・ω・`)

岩崎周一『ハプスブルク帝国

ハプスブルク帝国 (講談社現代新書)

ハプスブルク帝国 (講談社現代新書)

ハプスブルクといえば1200年ごろから第一次世界大戦終結までヨーロッパの一大勢力として君臨し、ヨーロッパ史を語る上では欠かせない存在ではある一方、その長期にわたる活動の入門的な通史が日本ではあまりないということで執筆された1冊だそうです。学校の世界史しかり一般向けの歴史書しかり、「国や地域で区切った通史」もしくは「広範な地域を語るが、ある時代だけ」というものが多く、その活動が長期間かつ広範囲に及ぶハプスブルク帝国の通史は書きづらかったのでしょう。もちろん知的好奇心を喚起されるという点はさることながら、ひとつの歴史物語として面白く読み切ってしまいました。新書にしてはかなり分厚く、かつタイトルがちょぴり地味ではあるものの、昨今の新書界における歴史ブームを考えると、ベストセラーになってもおかしくないぐらいに面白く興味深い1冊だと思います。ちなみに「知的好奇心」という点からすると、個人的には諸身分と支配階級の独特の緊張関係に関心を持ちました。一般的にヨーロッパの王政=絶対王政というイメージが強くありますが、実のところもっと複雑なスキームがハプスブルク帝国を支えていたということを知れたのは意外な収穫でした。

呉座勇一『応仁の乱: 戦国時代を生んだ大乱』

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

2017年後半の読書界は空前の中世・室町時代ブームでしたが、その端緒となったのが本書。室町時代から戦国時代へ移行する最大のきっかけで、義務教育のレベルで必ず学ぶほど著名な歴史イベントにも関わらず、同じような名前がやたらに登場したり、名前にも残らないような戦乱がぐずぐず続いたりと、大変地味でわかりずらい応仁の乱をさまざまな研究成果をもとに読み解いていきます。旧弊な室町時代を終わらせ、実力主義の戦国時代を到来させたある種の革命として語られることが多かった応仁の乱を、そのような唯物史観的エポックメイキングではなく、同時代人の観点から語ろうとしたことに本書のユニークな面があり、ベストセラーになった要因があると思いました。

森本あんり『宗教国家アメリカのふしぎな論理([シリーズ]企業トップが学ぶリベラルアーツ)』

反知性主義』が話題になった著者によるビジネス書、というよりビジネス教養書です(ちなみに『反知性主義』はわたしも読んでブログにしています)。はっきりいうと、学術的興味や深みという点では『反知性主義』に軍配が上がりますし、内容的に重複していることも多い(ビジネス書なのでそんなものといえばその通りですが……)。しかし本書は「アメリカに土着化したキリスト教」を語るにあたって、いわゆる「トランプ現象」、すなわち科学的経済的文化的に世界の最先端を行くアメリカがなぜドナルド・トランプという問題の多い男を大統領に選んでしまったのかという点をメインテーマのひとつに据えています。ここに同じく「アメリカに土着化したキリスト教」をテーマとする『反知性主義』との違いを感じますし、社会科学的問題が単なる机上の空論ではなく、現在進行形であることを改めて実感できました。

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