nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

2019/2020の年末年始に取り組んだ技術書1冊 + 読んだ技術書4冊 + 読んだ本1冊

年末年始というのはまとまった時間がとりやすい期間ということもあり、例年、技術書に取り組んだり、読んだりするようにしています。「鉄は早いうちに打て」ではありませんが、2019/2020の年末年始に取り組んだ本について、レビューというかメモ書きのようなものを復習がてらブログに残しておこうと思います。

取り組んだ技術書

Thorsten Ball『Go言語でつくるインタプリタ』(設樂洋爾訳)

Go言語でつくるインタプリタ

Go言語でつくるインタプリタ

年末年始に一番時間を費やしたのはこの本のはず。C言語風の文法を持つオリジナル言語monkeyのインタープリタをパーサジェネレータなどを利用することなく、Go言語を使ってゼロから開発していくものになります。テスト駆動開発で少しづつコードを成長させていく流れになっているので、手戻りを起こすことはほとんどなかったですし、正しく動くコードが常に手元にあるので、モチベーション高く勉強を進めることができました。またベーシックなものを作ったのち、高度な機能を拡張していくというストーリーのため、後半部が前半部の復習になっており、より学習効果が高かったと感じます。

この1冊でインタープリタのすべてがわかるというわけにはいきませんが、基本的な部分は抑えられたのではないでしょうか? インタープリター系の本は以前に読んだことがあったのですが、そのときは目で追っただけで、中身が身についたかと問われると……。今回は写経とはいえ、実際に手を動かしたので、理解度が段違いでした。写経結果はGitHubに置いておきますね。

github.com

インタープリターだけでなく、Go言語の勉強にもなったので、個人的には一石二鳥でした。

読んだ技術書

江渡浩一郎『パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則』

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

個人的にはこれが一番でした。内容としてはデザインパターンWikiエクストリームプログラミングといった、今日のソフトウェア開発では当たり前になった考え方やツールの原点を探るというもの。日常にありふれたものが一体どこからやってきたのか、という課題設定自体が知的好奇心をそそりますし、それに対する本書の説明が非常にわかりやすく、たいへん勉強になりました。日ごろから利用しているものだとしても、その成り立ちや歴史を知れば、それをもっとうまく使える気がしますね。

藤田昭人 『Unix考古学: Truth of the Legend』

Unix考古学 Truth of the Legend

Unix考古学 Truth of the Legend

UNIXの誕生からそのあとたどった歴史について、うまくまとめている本になります。最初期のUNIXについては資料が散逸していることも多いようで、見つけ出せたわずかな資料から歴史を紡ぎだしているあたり、まさに「考古学」。現在ではUNIXそれ自体に触れることは減っているものの、その精神は後年のプロダクトやOSにも引き継がれていっているはずで、その一部に触れられたような気がしました。

青山公士『ドラゴンクエストXを支える技術: 大規模オンラインRPGの舞台裏』

同じIT業界ではあるものの、商用ゲーム開発については未経験。まったく無知な世界の話ということもあり、面白かったです。オンラインゲーム開発特有だと思う部分もあれば、自分の住むSIerと同じ部分もあり、そういう比較をしながら、楽しく読み終わりました。

及川卓也『ソフトウェア・ファースト: あらゆるビジネスを一変させる最強戦略』

ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略

ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略

自分のTwitterで少しだけ話題に上がっていたということもあり、ミーハー根性で読みました。ビジネスにおけるソフトウェア開発のありかたについて、GAFAユニコーン企業で採用されている最新の理論や方法論を実例を交えて紹介しつつ、旧態依然とした日本企業に"ソフトウェア・ファースト"への変革を促しています。自分はSIer勤務のSEで、おもに自動車業界を担当しているのですが、クライアントのITへの感度の低さたるや、愕然とするものがあります。本書では「日本のお家芸たる製造業の旧態依然ぶり」を繰り返し批判し、ほとんど焦りにも近い形で、ソフトウェア・ファーストへの脱皮を提唱しています。自分のいまの立場もあいまって、本書のその問題意識がとてもよく伝わり、個人的にはたいへん胸に響きました。

いちゃもんをつけておくならば、本書では「プロダクト」という言葉が繰り返し登場するのですが、このワードについて明確に定義した箇所がないように思います。一応「プロダクト」の例として、Google ChromeWindowsGoogle日本語検索がなんども話題に上がります。卑近なものを例にあげて、わかりやすさを優先したのだと思いますが、これだとto Cに偏りすぎていて、読者に「プロダクト = to C」という印象を持たれかねないのでは? 製造業の場合、BOMやCADや製造指図など、大部分が社内で完結するto Bなシステムやソフトウェアが大半を占めていて、本書の内容にそうならば、そうしたto Bなものも「プロダクト」であるはずです。

読んだ本

井上久男『日産vs.ゴーン: 支配と暗闘の20年』

日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年 (文春新書)

日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年 (文春新書)

最後に毛並みが違う1冊です。日産のカルロス・ゴーン社長が逮捕され、そのうえ15億円の保釈金を払いながら、レバノンに海外逃亡したことがニュースをにぎわせていますが、それほどの大ごとになった根本的な原因や経緯を日産ウォッチャーでありゴーンウォッチャーでもある筆者がたくみに分析しています。日産内部のどろどろとした権力闘争、リストラとコストカット以外に能がないゴーン社長とその老い、企業規模の小さなルノーが巨大な日産を支配するといういびつな関係性、国策としての日仏のかけひき -- などなど、とにかく企業ドキュメントや人物ドラマとしては、そんじょそこらのフィクションの数倍面白かったです。