nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

読書メモ(宗教関係): 『失われた宗教を生きる人々』『講義ライブ だから仏教は面白い!』『剣と清貧のヨーロッパ』『トマス・アクィナス』『イスラームの歴史』

ここ2-3か月で読んだ宗教関係の本に関して、読書メモをさらしておきますね(´・ω・`)

ジェラード・ラッセル 『失われた宗教を生きる人々』(亜紀書房)

失われた宗教を生きる人々 (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズII―14)

失われた宗教を生きる人々 (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズII―14)

「中東社会=イスラム教」と勝手に思いがちですが、その見方は一面的で、実際には「イスラム教以外の宗教を信仰する人々」「イスラム教でも少数派に属する人々」が数多く存在します。本書はそうした中東地域に住む非イスラム教徒の暮らしぶりに関する旅行記・エッセイ集になります。注意してほしいのは、本書はあくまで身辺雑記的なスタンスをとっているということ。「マンダ教徒」「ヤズィード教徒」「ゾロアスター教徒」「ドゥールズ派」「サマリア人」「コプト教徒」「カラーシャ族」について本書は取り上げていますが、かれらの歴史や神学を知りたいという場合、本書は不向きでしょう。イスラム教全盛のこのご時世に非イスラム教徒がどのような生活を送っているのか? そこから離れようとしないところが本書の長所だと思います。

そもそも名前も知らなかった宗教・宗派がほとんどで、そのような宗教が存在しており、かつ、イスラム教全盛のご時世において苦境に立たされているということを知れただけでも勉強になりました。宗教それ自体ではなく、それを信仰する人の生活と現状がありのままに知ることができるという点で良書だと思いました。また書きぶりが妙にエキゾチックというか、異国情緒にあふれているということもあり、その感覚をエンターテイメント的に楽しむのも「あり」だとは思います(´・ω・`)

魚川祐司『講義ライブ だから仏教は面白い!』 (講談社+α文庫)

講義ライブ だから仏教は面白い! (講談社+α文庫)

講義ライブ だから仏教は面白い! (講談社+α文庫)

同著者の『仏教思想のゼロポイント』が面白かったので、手に取った1冊です。『ゼロポイント』がややアカデミック寄りで、メインテーマである"ゼロポイント"について直截的に語ろうとしていたのに対し、本書はタイトルに「講義ライブ」とある通り、やや通俗寄り。「読者の理解のためには寄り道も上等」というスタンスを感じました。話が込み入ったところに入ると「あとは『ゼロポイント』に譲る」というような記述もあり、「簡単に読めること」に対するこだわりがうかがえます。

もっとも「平易」であるからといって「レベルが低い」わけではありません。当たり前ですが、根底にある考え方は『ゼロポイント』と全く同じです。筆者は本書から『ゼロポイント』への導線を想定しているようですが、その逆を行った人間からすると、『ゼロポイント』を初めてよんだときには「実はよくわかっていなかった」「よくわからないまま、読み飛ばしていた」部分が保管されたような気がします。副読本としてもおすすめ(´・ω・`)

nekotheshadow.hatenablog.com

佐藤彰一『剣と清貧のヨーロッパ: 中世の騎士修道会托鉢修道会 』(中公新書)

都会の喧騒から離れた郊外で、自給自足の集団生活を送りながら、観想的人生を実践する。修道院という存在に対して、わたしのような人間はそういうイメージを持ちがちですが、実はそれは一面的な見方でしかありません。本書は多面的な修道院システムのうち、12世紀に登場した騎士修道会托鉢修道会について紹介しています。騎士修道会にしろ托鉢修道会にしろ、用語だけは知っていたものの、その登場の要因や実態などはよく知らなかったため、勉強になったというのが素直な感想です(´・ω・`) あとは同著者の『贖罪のヨーロッパ』も面白かったので、これもぜひ(´・ω・`)

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山本芳久『トマス・アクィナス: 理性と神秘』(岩波新書)

トマス・アクィナス――理性と神秘 (岩波新書)

トマス・アクィナス――理性と神秘 (岩波新書)

トマス・アキナスといえば、カトリック随一の神学者で、主にアリストテレス哲学とキリスト教神学の統合を目指した――と高校の教科書ではそう習うのですが、では具体的にどのような理屈でその「統合」を行ったのか? そしてその「統合」作業を通じて、どのような思想を構築していったのか? 本書はそういう「トマス哲学」を紹介した1冊です。本書を読む限り「トマス哲学」というのは非常に明晰な思想であるという印象を持ちました(小学生並みの感想)。

カレン・アームストロング『イスラームの歴史: 1400年の軌跡』 (中公新書)

イスラームの歴史 - 1400年の軌跡 (中公新書)

イスラームの歴史 - 1400年の軌跡 (中公新書)

もともとは非イスラム教徒(カトリックのシスターらしい)が書いた一般向けの入門書で、アメリカでベストセラーになったものの翻訳になります。本書が面白いのは「イスラム教史」の入門書であるということ。イスラム教の入門書とうたわれるものは数多くありますが、そのほとんどは教義に関するもので、本書のように歴史にスポットライトを当てたものは実は珍しいのでは? イスラム史を学ぶ上でネックになるのは、人物名でしょう。日本人になじみがないせいか、中東地域の人物名が登場すると頭が混乱しがちですが、本書は人物名がほとんど登場しないからか、すんんなり読むことができました。イスラム史の大枠をつかむにはもってこいの1冊だと思いました。