nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

最近の読書メモ(小説編):『箱根山』『失われた世界』『時間に忘れられた国』『死の接吻』

最近は小説の読書量が減っています……。これはわたし個人だけかもしれませんが、仕事が忙しく残業続きで疲れていると、フィクションを読むのが体力的・気持ち的につらくなります。とはいえ全く読んでいないというわけでもないので、その数少ないうちからとりわけ面白かった作品については、簡単な読書メモを残しておきたいと思います。

獅子文六箱根山』(ちくま文庫)

箱根山 (ちくま文庫)

箱根山 (ちくま文庫)

ここ最近ちくま文庫獅子文六をプッシュしているらしく、書店のちくま文庫コーナーに行くと必ず平積みしています。要するにその戦略にまんまと乗せられたというわけです(´・ω・`) 昭和の大衆小説らしいダイナミックな話運び、ともすれば荒唐無稽とも言いたくなるようなプロットもさることながら、執筆当時の箱根山をめぐる風俗描写が非常に興味深く、飽きることなく最後まで一気に読んでしまいました。大衆小説は時代が進むにつれて風化しがちですが、本作がそうなっていないのはおそらく「イエの因縁に引き裂かれた若い男女の秘めた恋愛」という普遍的なテーマを作品の中心に据えたからかと思います。

アーサー・コナン・ドイル『失われた世界』(光文社古典新訳文庫)

ドイルといえばシャーロック・ホームズであり、推理小説の大家というのが世間一般の認識ですが、歴史小説やSF分野にも優秀な作品を残しています。本作は俗に「チャレンジャーもの」とか「チャレンジャー教授シリーズ」とか呼ばれるSF&冒険小説シリーズの第1作目にあたるもので、奇人チャレンジャー博士を中心とした一団がいける恐竜を探してアマゾンの奥地へと向かって行きます。冒険と恐竜は男の子のロマンだよね(´・ω・`) 科学的考証の部分はさておいても、18世紀にこれだけのロマンあふれる冒険譚をかけてしまうという点で、ドイルは唯一無二の天才であったことを思い知らされます。

エドガー・ライス・バローズ『時間に忘れられた国(全)』(創元SF文庫)

時間に忘れられた国 (創元SF文庫)

時間に忘れられた国 (創元SF文庫)

『火星のプリンス』や『ターザン』シリーズで知られる、エドガー・ライス・バローズ晩年の作品です。生物進化に取り残され、恐竜や原始人が多数住む未開の地を冒険するという点で、前述の『失われた世界』に近いものがありますが、『失われた世界』に比べると本作はやや乱暴というか、征服主義的・植民地主義的な側面が多分に押し出されています。とはいえ冒険と恐竜は男の子のロマン(´・ω・`) 面白く読み切ってしまいました。

アイラ・レヴィン『死の接吻』(ハヤカワ文庫)

いわゆる倒叙もので、推理小説・探偵小説というよりはサスペンスあるいは犯罪小説よりの作品でした。「倒叙」すなわち読者が犯人を知っているスタイルの面白さのひとつは、犯人が追い詰められていく様子を眺めること、そして犯人を知っているがゆえにまるで自分が追い詰められていくかのようなスリルが味わえることですが、本作ではそのスリルを十二分に楽しむことができます。また本作の「犯人」は自らの立身出世のために女をだまして、犯罪に手を染めるのですが、その様子と過程が生々しく描かれていることもあってか、ページをめくる手を止められずについつい夜更かししてしまうというたぐいの作品でした。