nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

最近読んで面白かった新書: 『珈琲の世界史』『旧約聖書の謎』『アウグスティヌス』『観応の擾乱』『トラクターの世界史』

タイトル通り、最近読んで面白かった新書について、簡単な感想を書いておきます(´・ω・`)

旦部幸博『珈琲の世界史』 (講談社現代新書)

珈琲の世界史 (講談社現代新書)

珈琲の世界史 (講談社現代新書)

同じ筆者の『コーヒーの科学』(ブルーバックス)が面白かったこともあり購入。『コーヒーの科学』が理系本とすれば、本作は文系よりで、コーヒーが発見され広まるまでの歴史を大づかみすることができます。全部で250ページほどと比較的薄めの新書ですが、コーヒをめぐる文化史や世界情勢、スターバックスの成り立ちや現代コーヒー事情まで手広くキャッチアップしており、とても勉強になる1冊でした。知らずに飲むより知って飲むほうがおいしく感じられそうですね――といいつつ最近はマックスコーヒーばかり飲んでしまう(´・ω・`)

長谷川修一『旧約聖書の謎: 隠されたメッセージ』(中公新書)

旧約聖書の謎 - 隠されたメッセージ (中公新書)

旧約聖書の謎 - 隠されたメッセージ (中公新書)

これも同じ筆者の『聖書考古学』(中公新書)が面白かったので、購入したものになります。『聖書考古学』に比べると、やや雑多にトピックをまとめた印象ですが、しかしそのどれも興味深く、楽しく読みました。本書を読むと旧約聖書の史実性はかなり怪しい。しかし本書および筆者はあくまで客観的で科学的な態度を維持し続ける、つまり妙な神学論争や無神論を講じ始めたりしない、その冷静さは個人的には少し見習いたいところです(どんな感想だ)

出村和彦『アウグスティヌス:「心」の哲学者』(岩波新書)

アウグスティヌス――「心」の哲学者 (岩波新書)

アウグスティヌス――「心」の哲学者 (岩波新書)

アウグスティヌスといえば、カトリックプロテスタントあるいは正教会などその宗派を問わず、偉大なる教父として尊敬されており、また高校の世界史や倫理などで学ぶことも多い人物です。本書はその偉大なる教父の思想をとりわけ人物史を手掛かりとして明らかにしようとします。単にアウグスティヌスが残した書物を読み解くだけではなく、どのような人生を歩んだのかを主軸に置くアプローチ、すなわちテクスト論とは真逆のアプローチをとることで、その思想の理解に深みが出るような気がします。

亀田俊和観応の擾乱: 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い』(中公新書)

正直なところ本書のタイトルを見るまで「観応の擾乱」というワードすら忘れていました(´・ω・`) 高校日本史の教科書的価値観からいえば、やや印象の薄いこの騒乱が室町幕府の基本的な軍事行政制度を形作るきっかけであったということが本書には示されています。やはり教科書的価値観からすると、鎌倉時代南北朝時代に比べてやや武断的な印象を受ける室町時代の制度設計。その端緒を「観応の擾乱」から紐解いていくわけです。ちなみに昨今は室町時代ブームの読書界。本書はそのブームに乗っかる意図もあったと個人的には邪推しています(失礼)。

藤原辰史『トラクターの世界史: 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』(中公新書)

トラクターという技術がどのように発展したのか。そしてその発展は人々や社会にどのような影響を与えたのか。いわばトラクターをめぐる文化史を学ぶことができる1冊です。第3次産業に従事する現代人はどうしても「農作業が楽になったぜ。やったー」という単純な構図を思いがちですが、実はそうではない。トラクターと人間はここで簡単に表現できないようなアンビバレントな関係性を保ちながら発展してきたということを本書から学びました。