盆休みがもらえたため、日本的慣習に従い実家のある大阪へと帰省したのですが、やることといえば墓参りと多少の行政手続きぐらいで、意外と暇を持て余しがち(´・ω・`) そういうわけで(?)、ここ1ヶ月ぐらいで読んだ宗教関連書のうち、興味深いと感じられた3冊について書評を残しておきます。
田川建三『イエスという男 第二版 増補改訂版』(作品社)
- 作者: 田川建三
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2004/06/10
- メディア: 単行本
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本書は史的イエス、すなわち歴史学という観点からナザレのイエスの生涯と思想を読み解いていくのですが、その論理展開が超スリリング。ナザレのイエスは先駆的な宗教観社会観を持った宗教家だが、時代的な文脈を逃れられていないし、ましてや神の子などではありえないーー一般の信徒であれば到底受け入れられない議論が豊かな論拠と説得力ある言葉によって綴られ、また教会や聖職者あるいは神学者たちが(筆者が思うところの)イエス像をいかに歪めてきたのかということを舌鋒鋭く批判します。
本書に述べられた議論がどれほど正確なのか、あるいは主流的な聖書学からどれだけ受け入れられているのか、わたし自身は判断するすべを持ちませんが、それはさておいても脳天を揺さぶられる、目から鱗の1冊でした(どうでもいいですが、「目から鱗」も聖書の1節ですね)。
長谷川修一『聖書考古学: 遺跡が語る史実』(中公新書)
- 作者: 長谷川修一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/02/22
- メディア: 新書
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聖書に書かれていることがどれだけ歴史的事実に即しているのか。もちろんまったくの神話であったとしても、ユダヤ教やキリスト教がまちがっているというわけではないのですが、しかし気になってしまうところ。本書はおもに旧約聖書の内容について、考古学の観点から検証を加えていきます。
「考古学」という点に個人的には関心を持ちました。聖書歴史学というと古い文書や写本を読み漁るイメージがあり、現地まで行って地層を掘り返すような方法論があるとは全く考えていませんでした。考えてみれば当たり前のことですが(´・ω・`) もたらされる結論は知らないことばかりでしたが、しかし合理的なものばかり。知らなかった学問ジャンルについて知見を得られるだけでなく、聖書の知識も得ることができるという点で大満足の1冊でした。
松山洋平『イスラーム神学』(作品社)
- 作者: 松山洋平
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2016/01/28
- メディア: 単行本
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世界で2番目に信者が多い宗教でありながら、日本だとまだまだ接点が薄いイスラム教。日本でのイスラム教のイメージというと、厳しい戒律や昨今のテロリズムなど、トリッキーなものばかりが先行しやすく、また日本の思想史を振り返ってみると、大川周明や井筒俊彦など、必ずしも主流派とはいえない「やや異端」的なひとびとが俎上に上がりがちで、「イスラムとは何か」という本質的なところは見えないままでいます。
本書はそのタイトルの通り、イスラム神学について、イスラム社会において主流派を占めるスンニ派の観点から解説したものになります。ひとくちにスンニ派といってもいくつかの学派に分かれるのですがーーそのこと自体も本書を通じて知ったのですがーーそのすべてに対して、学問的に公平な記述がなされており、きわめて誠実な印象を持ちます。
正直なところイスラム神学に関して全く知識がない状態で読んだため、知らないことばかりで、今でもその全てを消化しきったとは言い難いのですが、知的好奇心をくすぐられたことは間違いありません。また本書を通して、長い期間と多大な叡智を積み重ねて検証されてきたイスラム神学の合理性を知り、日本的イスラム理解を一歩抜け出すことができたように重ます。