ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち
- 作者: J.D.ヴァンス,関根光宏,山田文
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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教育科学政治経済などなど、あらゆる分野において世界の最先端を走る国であるアメリカがなぜドナルド・トランプを大統領に選んだのか? その不合理で不可解な現実をさまざまな角度から解き明かそうとする議論がメディアにあふれており、本書もその文脈において取り上げられることが多い一冊です。とりわけ日本社会で生活していると「リベラル」なアメリカ白人像しかメディアに取り上げられませんが、しかし3億人いるアメリカ人すべてがそうではない。なかには輝かしい経済発展から取り残され人々、そしてその状況が常態化した地域があり、経済的文化的政治的貧困から抜け出せず、子供もそれを受け継がざるを得ないという状況があるわけです。古い社会学の単語を使うならば「階級」。それが従来支配的階層とされてきた白人社会にも存在するという驚きがありました。
アメリカ社会と経済から疎外された白人たち――そのような人々がいることを描いたという点でも読むに値するのですが、しかし本書が爆発的に読まれているのはそれだけではないと考えています。要するに「読み物として面白い」。本書は筆者が自らの生まれ育ちを振り返るというものですが、その記述がどこか客観的でありながら、ときには感情的でもあり、そのバランスが非常に優れいています。筆者はいわば成功者なのですが、その成功した現在の立場から故郷を軽侮するわけでもなく、事実とその時感じていたことを淡々と述べていく。あるいは社会核的な視点で分析をしつつ、一方で故郷愛が見え隠れしてるような記述も散見されており、そうしたバランスがとてもいい具合だとわたしは感じました。頭の良さが読んでいるだけで手に取るようにわかり、社会的に成功するのもうなづけますね(´・ω・`)