nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

最近読んだ海外小説: 『細い線』『あしながおじさん』『カクテル・ウェイトレス』

最近はいろいろな意味でストレスフルな仕事が続いており、読書意欲、とりわけ小説ジャンルに対する意欲が落ちていました。夏バテで食欲が落ちるようなものでしょうか。小説を読むには精神的な余裕がいるということを実感させられる毎日です。転職したい(´・ω・`) でもそんな時間も気力もない(´・ω・`)

ただそんな毎日でも面白い小説には出会うので、そのいくつかの感想をブログに残しておきたいと思います。

エドワード・アタイヤ『細い線』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

細い線〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

細い線〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

本作を買った時期がちょうど出版されたばかりだったらしく、平積み状態だったので、ついつい手に取ったのですが、想定外に面白い作品でした。話の内容としては「夫が浮気相手である親友の妻を殺してしまうが、それが発覚しないため、悶々とした日々を送る」というもの――というより、それだけの内容なのですが、その「悶々」加減の心理描写が非常にうまく、まるで自分が犯した罪であるかのような気分に陥ります。また物語もゆっくりと動いていくのですが、その転がり方がかなり意外で、とりわけラストは衝撃の一言でした。

ジーン・ウェブスターあしながおじさん』(光文社古典新訳文庫)

あしながおじさん (光文社古典新訳文庫)

あしながおじさん (光文社古典新訳文庫)

少女小説の古典ですが、20代も後半に差し掛かろうとする独身男子が読んでみました。読んだ感想としては「こんな面白い話があるなら、早く教えてよー」というもの。帯には「女子だけが知っている名作」(うろ覚え)とあったのですが、むしろ男性こそ読むべき作品であると感じました。「日々の生活をしたためた手紙を孤児院出身の主人公が、大学進学費用を工面してくれた篤志家に送る」という書簡体小説で、その手紙のひとつひとつが魅力的であることもさることながら、主人公の成長物語、すなわち教養小説としても楽しく読める作品でした。

ジェームズ・M・ケイン『カクテル・ウェイトレス』(新潮文庫)

カクテル・ウェイトレス (新潮文庫)

カクテル・ウェイトレス (新潮文庫)

ノワールあるいはハードボイルドジャンルの創始者といっていい作家のひとりであるにもかかわらず、日本だといまいち人気が低く、邦訳も手に入りづらい状況のジェームズ・M・ケイン。本作はその遺作であり、実際には残されていた断片を発掘した編集者がひとつにまとめ上げたという性質の作品のようです。ノワールやハードボイルドジャンルに限らず、創作者が年齢をとると体力や精神力の低下からか、描写が散漫になり、作品の性質が低下してしまうということがあります。とりわけ犯罪小説は緻密な描写が命。しかし本作はケイン晩年の作品ながら、緻密さは失われておらず、一流の犯罪小説として成立しています。さすがケインと思わせる作品でした。