nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

最近読んだ3冊: 岡田一郎『革新自治体: 熱狂と挫折に何を学ぶか』(中公新書), 池内恵『【中東大混迷を解く】サイクス=ピコ協定: 百年の呪縛』(新潮選書), 宇野重規『保守主義とは何か: 反フランス革命から現代日本まで』(中公新書)

タイトルが長くなってしまった(´・ω・`) 最近政治系の新書を読む機会が多く、その読んだ中で興味深い3冊を簡単に紹介します。

岡田一郎『革新自治体: 熱狂と挫折に何を学ぶか』(中公新書)

今では考えにくいことですが、社会党あるいは共産党など、左翼/リベラル勢力が地方行政のヘゲモニーを握っているという時代が日本にありました。とくに左翼/リベラル系の政治家が首長を務めていた自治体を指して「革新自治体」といい、教科書的な記述にのっとれば「高度経済成長による公害被害の拡大とともに『革新自治体』は出現、その後福祉政策の拡充を原因とする放漫財政がたたってその姿を消していった」とされていますが、はたして本当でしょうか? 日本社会党史を専門とする筆者により、革新自治体の栄枯盛衰が多面的に検証されており、いまや顧みられなくなった「革新自治体」の総括になっている一冊だとわたしは感じました。

池内恵『【中東大混迷を解く】サイクス=ピコ協定: 百年の呪縛』(新潮選書)

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

イラク戦争やシリア内戦など、混迷を極める中東情勢ですが、その大元凶であるというような文脈において、サイクス=ピコ協定の名前を耳にすることが多くなりました。しかし本当に物事はそれほど単純なのでしょうか? サイクス=ピコ協定ならびにイギリスの3枚舌外交が中東に大きな禍根を残したのは事実でしょう。とはいえ昨今の中東の混迷には、複雑な政治/民族状況が関係しており、とても過去の密約ひとつに集約できるような話ではありません。本書では日本/日本語では得難い、中東に関する良質な情報や中東を観察する視点が提供されており、日本における知現代中東政治研究の第一人者として名高い筆者だけのことはあると思いました。

宇野重規保守主義とは何か: 反フランス革命から現代日本まで』(中公新書)

現代日本において、あるいは多くの先進諸国において、保守主義は強い動揺を迎えています。本屋に行けば、さまざまな著者や知識人たちが思い思いの保守主義を表明していることからも明らかなとおり、「何を保守すべきなのか」がわからない時代になっているのは確かでしょう。本書はエドマンド・バーク保守主義の源流として、その保守主義がイギリス/アメリカ/日本において、どのように拡散し影響したのかをさまざまな思想家を取り上げながら、分析しています。動揺する現代の保守主義において、保守主義とは何かをもういちど問い直す、よい機会になるかもしれませんね。