nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

G・パスカル・ザカリー『闘うプログラマー: ビル・ゲイツの野望を担った男たち』

WindowsといえばMicrosoftMicrosoftといえばビル・ゲイツ。この単純な連想が思いつかない人間がこの地球上にいるのだろうか。そういいたくなるほど、Windows/Microsoft/ビル・ゲイツのもたらした影響は大きい。

しかしMicrosoft帝国を一代で築き上げたビル・ゲイツといえども、たったひとりでWindowsを作り上げたわけではない。Windowsとは複雑で巨大、そして一般消費者向けであるがゆえにバグはゆるされないソフトウェアである。多くのプログラマとその管理者たちがかかわらねば、完成するはずもない。本書はMicrosoft/Windows帝国の礎となったWindows NTを開発する壮大な物語であり、「多くのプログラマとその管理者たち」に焦点を合わせたという点で、またとない作品に仕上がっている。

いわば群像劇である。Windows NTという、当時としては空前絶後のソフトウェアの開発に対して、個性的なソフトウェア開発者はどのようにかかわったのか。そしてそのプロジェクトは個々人の人生にとってどのような意味を持ったのか。本書を読めば、属人化を徹底的に排した人月産業が斬新なソフトウェアを生み出せないということがありありとわかってしまうかもしれない。


  • よかった点
    • ソフトウェア開発プロジェクトの物語を描くにあたって、群像劇的なアプローチを採用したのは非常に斬新。
    • 「読み物」「物語」として優れており、小説といわれても疑わないかもしれない。
  • 悪かった点
    • 2016年現在からすると、話の舞台がやや古い。古いのはまったく構わない(というか仕方ない)のだが、それに対するケアが不十分。要するに「古い」と思われる項目については、簡単な解説ページでもあればよかった。
    • 技術的な単語や内容について、とくにことわりなく話が進むため、IT系に疎い人にとって、読むのにつらいところがあるかもしれない。