最近読んで面白かった2冊を紹介します(´・ω・`)
立川談春『赤めだか』(扶桑社文庫, 2015)
- 作者: 立川談春
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2015/11/20
- メディア: 文庫
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著者である立川談春が師匠の立川談志に入門したのち、前座/二つ目を経て真打になるまでの修業時代を振り返ったエッセイ集です。ここ最近ドラマになったらしく、書店の平台に文庫が積みあがっていたので、何気なくレジへもっていったのですが――これがなかなか素晴らしい内容でした。
落語家になるには、特定の師匠に対して「入門」する必要があります。「入社」や「就職」ではなく、あくまで「入門」です。要するに師匠と擬制的な親子関係を取り結び、親が子を育てるようにして弟子を育てていく。近代社会とは違う理屈の世界で、どのようにして落語家が一人前に成長していくのか。本書は当事者によりその過程が描かれており、ユーモア交じりなこともあって、ついつい一気読みしてしまった記憶があります。
意外に感じられたのが、師匠立川談志の弟子養成が結構親切なこと。メディアで見る破滅的なイメージからすると、弟子をぞんざいに扱ったように思われますが、実際は違ったようです。もちろん滅茶苦茶なエピソードもかなり書かれてはいるものの、こと落語家養成ということになると、弟子に手取り足取り稽古をつけています。右も左もわからない新人を現場に突っ込んだ挙句、ろくに指導もせずに仕事を押し付けるという育成方法をとる会社が世の中にはあるらしいので、こういう話を読むと涙が出たりでなかったり(´・ω・`)
小笠原啓『東芝 粉飾の原点: 内部告発が暴いた闇』(日経BP社, 2016)
- 作者: 小笠原啓
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2016/07/15
- メディア: 単行本
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日本を代表する大企業であり、不調気味の製造業界において気炎を吐いていたはずの東芝。しかし実際は巨額の粉飾決算を行っており、会社の存亡が問われるほどの事態になっているというニュースはいまだ世間をにぎわせています。本書は関係者へのインタビューをもとに、東芝巨大粉飾決算の原因を探ったものです。
本書を読む限り、腐敗の理由は「組織の風通しの悪さ」にあります。上司が部下に対して、パワハラまがいの方法で目標を達成させることが日常化していたようです。部下も東芝ブランドや給料あるいは福利厚生を考えると、そのパワハラ的要求をのまざるを得ず、不正は深刻化してった様子が本書にはありありと書かれています。もっともパワハラ上司もそのまた上の上司から目標をパワハラ的に押し付けられており、パワハラのウォーターフォールが不正の根本にあるといえるかもしれません。
ではパワハラの最上流にいる経営陣はどうして浮世離れした目標を立てるに至ったのか? これが実にくだらない理由で、「自分の面子や政治勢力を維持拡大するため」。要するに人事抗争や権力闘争の一環であり、その結果が「不正を行ってでも目標を達成する」という組織体質を作り上げたわけです。「魚は頭から腐る」ということが実感できる一冊でした。