nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

最近読んだアメリカのキリスト教に関する2冊がとてもよかった

ここ最近、アメリカのキリスト教に関する本を2冊を読み、そのどちらも興味深い内容だったので、ブログで紹介します。

森本あんり『反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮選書,2015年)

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)

最近よく耳にする「反知性主義」という単語。日本では「あらゆる知性に反感を持ち、自分たちの思う通りのことだけを信じる」という程度の意味合いであり、概して自民党/安倍政権支持者に対するレッテルとして利用されている節もあります。しかし本書のとる立場はそれとは違います。本書によると「反知性主義」とは「あらゆる知的権威が政治権力と結びつくことを恐れる態度」であり、それはアメリカに土着したキリスト教の神学的な裏付けによって支えられています。

言い換えれば「反知性主義」とは「知性の越権を厳しくいさめる思想」であり、アメリカの民主主義の原点であるといえるかもしれません。一方で進化論すら否定する聖書原理主義的な人々を数多く生み出しており、対岸の火事を眺める立場から言えば「功罪半ばする」という感想を抱きました。とはいえグローバル化の時代ですから、アメリカ固有の「反知性主義」が太平洋を越えて日本へ到来する可能性も十分あります。

松本佐保『熱狂する神の国アメリカ: 大統領とキリスト教』(文春新書,2016年)

タイトルだけ見ると、近年日本でも話題の、アメリカのキリスト教原理主義の実態をレポートした新書のように思うかもしれません。その手のことも触れてはいるのですが、本書のメインテーマはむしろアメリカにおけるカトリックの歴史です。アメリカといえばWASPの国、つまりプロテスタントの国というイメージ持ちますが、実際には人口の20%近くがカトリックであり、アメリカ政治を語るうえで無視できない存在です。そのアメリカのカトリックがアメリカ政治にいかに影響を与えてきたのか、あるいは主流派であるプロテスタントとどのような関係を保ってきたのかについて、本書の記述の8割が充てられています。またキリスト教シオニズムという観点から、アメリカのユダヤ教についても少し書かれており、アメリカ=プロテスタントというイメージが覆った本でした。

正直に言うと、タイトルでやや損をしている感はありますね(´・ω・`) もうちょっとカトリックについて書いた本であるということを推すようなタイトルでもよかったように感じます。