nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

最近読んでよかった本: 『宇宙の戦士』『夏子の冒険』『ドキュメント パナソニック人事抗争史』『サイバー・インテリジェンス』

4-5月には20冊強の本を読んだのですが、いくつかよかった本があったので紹介してみます。ジャンルや洋の東西はめちゃくちゃです(´・ω・`)

ロバート・A・ハインライン『宇宙の戦士』

本作はいわゆるSF/スペースオペラであり、そういうテーマから読んでも面白いのですが、わたしがなにより惹かれたのはそのストーリー。「どこにでもいる青年が厳しいブートキャンプを経て、一人前の兵士へと変わっていく」。わたしが本作を読んだのはちょうどきつい新人研修の途中であり、つらさに差はあるとはいえ、置かれている状況は本作の主人公と同じでした。それで余計に感情移入してしまったのかもしれません。

もっとも内容が内容ですから、「力による支配」「ナショナリズム」「植民地主義」「軍国主義」などを肯定しているようにも思われるかもしれません。ですが、わたしはその表層に流れる思想はさておいても、子どもから大人へと脱皮していくその過程に感動し、ついつい自分に置き換えてしまったのでした。

三島由紀夫『夏子の冒険』

夏子の冒険 (角川文庫)

夏子の冒険 (角川文庫)

主人公の夏子が世をはかなんで、修道院へ入ろうとする場面に始まる小説です。しかも修道院に入る理由はというと「いいよって来る男たちが総じて小市民的だから」。この理由を読んだとき、正直なところわたしはどきっとしました。わたし自身もついつい小市民的になりがちだからです。「過去の自分は今の自分=夏子が嫌うような男になりたかったのだろうか?」とついつい考えてしまいました。

ついで夏子はある男に恋をして、北海道へ冒険に出かけるのですが、このあたりの描写はややぬるめの冒険小説といった趣で、個人的には結構好きです。また理解不能な女が恋により理解可能な女になっていくというストーリーはフェミニズム的にも何か語れそうな気もしますね。

岩瀬達哉『ドキュメント パナソニック人事抗争史』

昨今凋落の激しい日本の電機業界ですが、その先陣を切った(?)のがPanasonic。経営の神様が作り、在阪企業の雄であったPanasonicがなぜここまで落ちぶれてしまったのか? 著者は綿密な取材から、その原因を経営者の人事抗争にあったと分析しています。

詳しい内容は読んでいただくとして、わたしの感想をふたつ述べておきます。まず「人事は難しい」ということ。適切な能力を見抜き、その人を適切な場所に配置するだけでなく、そこに情やしがらみを介在させてはならない。とにかく難事業であるということが伝わってきました。

次に「男の嫉妬は恐ろしい」ということ。よく女の嫉妬は恐ろしいといいますが、男の嫉妬のほうがなお恐ろしいということがよくわかりました。また嫉妬や矜持や保身や権謀術数がPanasonicが進むべき道を誤らせていくという恐ろしさも感じました。

伊東寛『サイバー・インテリジェンス』

サイバー・インテリジェンス(祥伝社新書)

サイバー・インテリジェンス(祥伝社新書)

インテリジェンスとはいわゆる諜報活動のこと。本書によれば、国家間の諜報活動がサイバー空間に広がりつつあり、それが外交や戦争の形を変えつつあるそうです。つまり兵火を交えるだけが戦争ではなく、インターネットのようなサイバー空間を制することがひとつの戦争であると述べているのです。よく戦争とは情報であるといいますが、インターネットほど情報をやり取りしている場所はないわけですから、インターネットやサイバー空間を制することがそれすなわち外交面での優位という図式には説得力があります。

少し推測や予想が多いような気も受けますが、諜報活動は各国ともに隠密裏に行うことですから、ある程度仕方ないという側面はあります。また著者はもと自衛官とのことで、守秘義務に抵触するようなこともあるのでしょう。まあ話し半分に読み始めたら、なかなか面白いというタイプの本かもしれませんね(´・ω・`)