nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

ジェームズ・P・ホーガン『創世記機械』読了。

創世記機械 (創元SF文庫)

創世記機械 (創元SF文庫)

 本作の作者ジェームズ・P・ホーガンがSFファンだけでなく、ミステリファンたちにもその存在が認知されている理由として、そのデビュー作『星を継ぐもの』があります。  

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 「いわば密室状態の月面で発見された死体はなんと5万年前のもの! なぜそのようなことが? その謎を解き明かすうち、思いもよらぬ壮大な謎の扉が開かれていく……」まさに推理小説ですね。実際ミステリのオールタイムベストのような企画には必ずこの『星を継ぐもの』が入ってきます。わたしも以前読み、「これはすごいミステリだ」なんて思った記憶があります。

 その記憶があったからこそ本作『創世記機械』も手に取ったのですが……残念ながらミステリではありませんでした。ごくごく普通の(?)SFです。それも内容はかなりハード。というより本作内で展開される論理やロジックを語るのが主であって、物語はそれに従属しているにすぎません。これをハードSFというのでしょう。今までぼんやりとしかわかっていなかった「ハードSF」のハードSF性を本作を読んで初めて芯から実感できたような気がします。

 期待とは違いましたが、これはこれで面白かったです。本格ミステリの作品にもとにかくロジックだけに注力したものがありますが、それを読んだのと同じような感覚です。もちろん本作の場合、SFというだけあって展開される論理の内容は非常に科学よりですが。

 出発点から論理的に展開し続け、思いもよらぬところへ着地する。その過程に脳を浸す面白さはミステリとSFに共通のものでしょう。本作はSF作品としてそこに特化した作品であり、SFには門外漢中の門外漢のわたしでもその観点からは比較的楽しく読めたと思います。