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nekoTheShadow’s diary

技術ブログとして始めたはずが、読書&愚痴ブログになりました(´・ω・`)

加賀美雅之『双月城の惨劇』読了。

読書

双月城の惨劇 (光文社文庫)

双月城の惨劇 (光文社文庫)

 以前「若くして亡くなった」というニュースだけを耳にしており、以来気になっていた作家のひとり。今回読んだのはその長編デビュー作です。

ぶく速 加賀美雅之、5月に亡くなっていた

 「どんな小説だったか」についてはわたしがぐちぐち述べるより二階堂黎人による解説を引用した方がわかりやすいと思われます(というか二階堂黎人が解説を請け負っている時点で作風がわかりそうなものです)

あなたがもしも、この解説を本文より先に読んでいるならば、即座に物語の最初の一頁を開くべきだ。するとそこに、不可能犯罪、密室、連続殺人、殺人鬼、伝説、亡霊、名探偵、双子の美女、遺産相続、謎、秘密、古城、一族の確執、呪い――といった、本格推理小説ならではの燦然と輝く宝物の数々が、溢れんばかりの状態で詰まっているのを見つけるだろう。(p.572)

私が書いた『人狼城の恐怖』と『悪霊の館』を足して二で割ったような暗黒の雰囲気と多彩な道具立て――しかも、私好みの不可能犯罪のオンパレード。謎も秘密も単なるパズル仕立てではなく、ロマンの香りを濃厚に放っている。怪奇と恐怖が充満した古典的な衣装の中に、現代的な主張をちゃんと兼ね備えた贅沢な小説構成。(p.581)

人狼城の恐怖〈第1部〉ドイツ編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第1部〉ドイツ編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第2部〉フランス編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第2部〉フランス編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第3部〉探偵編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第3部〉探偵編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第4部〉完結編 (講談社文庫)

人狼城の恐怖〈第4部〉完結編 (講談社文庫)

悪霊の館 (講談社文庫)

悪霊の館 (講談社文庫)

 あと探偵役のシャルル・ベルトランはディクスン・カーの生み出した探偵アンリ・バンコランのオマージュ――というか同一人物ですね。「第1次世界大戦では諜報活動に従事し、戦後はパリ警察のお偉いさんとして活躍」という設定でわたしは気がつきましたが、解説の二階堂黎人によると

ところで、この『双月城の惨劇』をすでに読まれた方は、主人公の名探偵シャルル・ベルトランが、その容貌も素性も性格も探偵法も、アンリ・バンコランにそっくりなのに気づかれたであろう。(p.578)

とのこと。

 しかも作中ベルトランが解決したとされる事件がいくつか話題に上がるのだが、そのすべてがバンコランものの作品だという(p.578)。参考資料として『夜歩く』『絞首台の謎』『髑髏城』があげられており、不思議に思っていたのだが、これだったのかと納得。

夜歩く【新訳版】 (創元推理文庫)

夜歩く【新訳版】 (創元推理文庫)

絞首台の謎 (創元推理文庫 118-15)

絞首台の謎 (創元推理文庫 118-15)

髑髏城 (創元推理文庫 118-12)

髑髏城 (創元推理文庫 118-12)

 ――外的な情報が多くなってしまった。閑話休題

 読んだ感想としては「なかなか楽しめた」というのが率直なところ。ただしこれは作品の質が悪いのではなく、完全に好みの問題でしょう

 以前から公言(?)しているようにわたしはトリックよりロジック派。複雑怪奇な完全犯罪を精 密無比の論理によって解き明かす。わたしはその過程にあらわれる論理の美しさにひかれるタイプです。

 そのため本作のようなトリック第一主義とは非常に相性が悪い。しかしそれ以外の側面は楽しむことができました。とくに舞台づくり・雰囲気づくりは一級品で、ぐいぐいのめりこんでしまいました。事実1日ちょっとで563ページの大長編を読んでいますし。

 ディクスン・カー横溝正史二階堂黎人――このあたりがお好みの方は読んで損はないと思います。