- 作者: ポールケイン,村田勝彦
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1989/03
- メディア: 文庫
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訳者あとがき(村田勝彦)曰く
本書『裏切りの街』は、ダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーを世に送り出した"ハードボイルド発祥の地"ともいうべき『ブラック・マスク』誌に、1932年に5回にわたって分載され、翌年の33年にダブルデイ=ドーラン社より単行本として刊行されたハードボイルド・クライム・ノヴェルの幻の古典である。そして、ポール・ケインが書いた唯一の長編小説である。(p.255)
ポール・ケインという名前は小耳にはさんでいたのですが、長編が残っているとは思いませんでした。しかも邦訳があるという。なんという幸運。時にはブックオフの100円コーナーも見てみるものですね。思わぬ掘り出し物でした。
個人的な感想としては、冷徹な文体に舌を巻きました。短文で小気味よく、そして客観描写に徹している。レイモンド・チャンドラーが「超ハードボイルド文体」と評したのもうなづけます(これも訳者あとがきの受け売り。pp.257-258)
また物語のスピード感にも驚きました。とにかく展開が目まぐるしい。ちょっと油断していると、何が何だかたちまちわからなくなりそう。
「流れ者の主人公ケルズが陰謀の中で自らの信念を貫きとおす」ハードボイルド文学にありがちな話とはいえ、それを「冷徹な文体」と「スピィーディな物語」に包むことで、これほどの化学作用になるとは思いませんでした。やはり「古典」は「古典」たるゆえんがあるのです。
最後に訳者あとがきから勉強になったところを引用しておきます。
ぼくにとって本書のおもしろさは、まず第一にストーリーにある。"不況と混乱の時代"、あるいは"ギャング・エイジ"と呼ばれる30年代のロサンジェルスで、ひとりの男が市政界とつながりを持つ組織の陰謀に巻き込まれ、反撃に出て組織を相手に戦う。その戦いぶりのタフさ、したたかさ。魅力的なシーンも続出する――賭博船、クラップス、ボクシングなど。・なかでも、当時"浮かぶカジノ"と呼ばれた賭博船は最高の"大道具"で、後年、チャンドラーも「犬が好きだった男」と『さらば愛しき女よ』でつかっている。(p.257)
チャンドラー『さらば愛しき女よ』の賭博船は有名ですが、ここから影響されていたとのこと。知らなかった……
さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-2))
- 作者: レイモンド・チャンドラー,清水俊二
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/04
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- 作者: レイモンドチャンドラー,村上春樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/06/05
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