以前は前編について書きました。今日はその続きになります。
そもそもわたしがこの作品に興味を抱いたのはチャンドラー『長いお別れ』にインスパイアされているという(怪)情報を耳にしたからでした。確かに村上春樹はチャンドラーの長編の翻訳を手掛けていますし、ありえそう。
- 作者: レイモンド・チャンドラー,清水俊二
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ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)
- 作者: レイモンド・チャンドラー,村上春樹
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実際に読んでみた感想としては……ふむふむ、影響を受けていそうですね。
とりわけ「僕」と「鼠」の関係は、『長いお別れ』のマーロウとテリー・レノックスの関係に似ているような気がします。どちらも「ホモソーシャル」という意味で。
もちろん語りたいテーマは両作品で異なります。『長いお別れ』は友情そのものがメインテーマです(詳しいひとからいわせれば違うのかもしれませんが)
対して『羊をめぐる冒険』ではふたりの友情はあくまで副菜。本当にあれこれいいたいのは、「近代」なる物語とそれを没落させるもうひとつのものがたり、そしてそれを見守るしかないわたしたち、という3者の関係性でしょう(違っていたらすみません)ともかく、かなり「政治的」な物語であることは間違いないでしょう。
個人的な関心事はともかく、内容や文体は総じて楽しめました。