nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

山前譲編『文豪の探偵小説』読了。

文豪の探偵小説 (集英社文庫)

文豪の探偵小説 (集英社文庫)

その名のとおり、近代文学の巨匠たちが著した探偵小説――というより、探偵小説風味の小説を集めたアンソロジー。
収録作品は以下。

一応歴史に名前を残す作家ばかりが書いているので、どれもかなりの出来。
なかでも、個人的には三島由紀夫『復讐』が気に入りました。
なんというか……社会派推理小説を感じて、なかなか良かったです。

ともかく全体を通して楽しく読めたには読めたのですが……
探偵小説というにはちょっと無理がありませんかね。
『途上』『オカアサン』あたりは明確に探偵小説といえそう――少なくとも、探偵小説を意識した作品といえそうですが、あとの作品は「探偵小説とも読める」程度だと思います。
じゃあ全くだめかというと、そういうわけでもなく……
まあ、がちがちの探偵小説を期待するべきではないですね。
「娯楽性の強い、近代文学の小品を集めたアンソロジー」として読むものだと思います。

ちなみに、あとがき(山前譲)いわく、

吾輩は猫である』の終盤、迷亭が苦沙弥らに、「この間ある雑誌をよんだら、こういう詐欺師の小説があった」とある小説の筋を披露している。その小説がロバート・バート「放心家組合」(あるいは「健忘症組合」)だと初めて指摘したのは、奇想溢れる小説で読者を魅了した山田風太郎だった。江戸川乱歩が古今の推理小説ベストテンにも選んだ作品である。(p.269)

だそうである。
これは知らなかった。
こういう解説が読めるのは文庫本のよいところですな。
なお「放心家組合」が読めるのは以下のアンソロジーだそうです。

世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)