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nekoTheShadow’s diary

技術ブログとして始めたはずが、読書&愚痴ブログになりました(´・ω・`)

カー『皇帝のかぎ煙草入れ』読了。

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

カー中期の代表作にして異色作。
なおわたしが読んだ訳は絶版です(中古で見つけたため)
新訳はふつうに手に入るので興味がある方はこちら。
皇帝のかぎ煙草入れ【新訳版】 (創元推理文庫)

皇帝のかぎ煙草入れ【新訳版】 (創元推理文庫)

異色作というのは、カー特有の怪奇趣味が全くないため。
クリスティと見間違いそうになるほどに、さわやかである。
中心的なトリックもカーお得意の密室ではない――より正確に言えば、純粋な密室ものではない――ので、ストーリーテーリングのうまさが際立っています。

――とここまで書いて、家にあった『火刑法廷』の文庫を見直していると、解説にこんな記述が。

人はよくカーを密室作家とよぶが、彼の全作品中(1972年までに発表した70冊の長編のうち)純粋な密室トリックは、せいぜい10冊ほどである。オカルティズムもカーは奇術用語でいうミスディレクションとして作品の中で使用しているにすぎない。
日本におけるカーの最大の不幸は、ある種のミステリ・マニアの間で、密室派の教祖として神格化され、ストーリー・テラーとしての力量がまったく評価されていないことだろう。(p.340)

そうなんだ、知らなかった――ではなくて、ここで解説者の松田道弘がカーの魅力として訴える「ストーリー・テラーとしての力量」が『皇帝のかぎ煙草入れ』では十二分に楽しめるのではないでしょうか。

なおここで引用したのは『火刑法廷』の古い文庫です。

火刑法廷 (ハヤカワ・ミステリ文庫 5-1)

火刑法廷 (ハヤカワ・ミステリ文庫 5-1)

最近東京創元社がカーの新訳をやまほど出しているようですが、新訳の『火刑法廷』に旧訳と同じ解説が掲載されているかどうかについては未確認です。
まあ常識的に考えて、まったく別の解説でしょうね。
火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)

火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)