nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

乾くるみ『匣の中』読了。

匣の中 (講談社文庫)

匣の中 (講談社文庫)

今や売れっ子ミステリ作家のデビュー作――ではないとのこと。

ふむふむ。出版デビューはメフィスト賞をとった『Jの神話』だが、先に応募していたのは『匣の中』で、実質的には第2作にあたるらしい。
今の今までデビュー作だと思っていました。反省。
Jの神話 (文春文庫)

Jの神話 (文春文庫)

タイトルからもわかる通り、おおざっぱな内容は竹本健治匣の中の失楽』のパロディ。
妙に衒学的な登場人物たちが推理バトルを繰り広げながら、現実とフィクションがまじりあっていく構造はまさに『匣の中の失楽』と同じ。

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

ただし、中心的なアイディアは全く別物。
両方読んでみての感想ですが――やはり後発の『匣の中』のほうが作品として洗練されているように思います。
だったら『匣の中の失楽』がだめかというと、もちろんそんなことはありません。
『匣の中』も大仕掛けが仕込まれてはいますが、『匣の中の失楽』の仕掛けのほうが精密でかつ壮大だと思います。
いわゆる「みんな違ってみんなよい」というやつですね。
まあ『匣の中の失楽』がなければ『匣の中』もなかったわけで、その分前者のほうが歴史的に見て偉大かもしれませんが……
(もちろん『匣の中』を貶める意図はありませんよ!)

個人的には両方楽しめたのですが、それは先に本家のほうを読んでいたから。
匣の中の失楽』未読で『匣の中』を読んでも面白さ半減でしょう。
『匣の中』を読む際は先に『匣の中の失楽』を読んでおくことをお勧めします。