『ゴッド・ファーザー』のモデルになった人物の血を引き、みずからもマフィアの一員として世界を飛び回ったあと、日本ではやくざの盃をうけて、いわゆる経済やくざとして活動。現在はイタリアンレストランを経営している--というあらすじだけで、波乱万丈の生涯を送ってきた人物の自叙伝である。ふつうのサラリーマンをしていると、なかなかかかわりあいにならない世界の話のことなので、興味深く読んだ。ちなみに著者がオーナーのレストランだが、以前に食べに行ったことがある(本書を読んだのはこれがきっかけ)。たしか会社の新人歓迎会か何かで、料理はかなりうまかった記憶がある。
餃子の王将といえば安くてうまい中華料理レストランチェーンだが、その社長が白昼堂々銃殺され、その殺害方法から
暴力団の関与が疑われつつも、犯人がいまだ逮捕されていないというのは世間に衝撃を与え続けている。本書はその
餃子の王将社長銃殺事件の背景に迫ったものである。どこまで本当なのかは判断に困るが、日本全国に店舗を構える上場企業がこれだけの問題を抱えている、それも闇の深い問題ばかりというのは、個人的には衝撃だった。
猫組長・西原理恵子『猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言 』(扶桑社)
著者は
山口組につながる組長という身分でありながら
Twitterを開設し、
山口組分裂騒動の際には独自情報を矢継ぎ早に公開したことで知られる人物である(現在はかたぎらしい)。やくざのしのぎというと薬物や用心棒や債権回収や違法賭博などを思い浮かべるが、著者は国際金融の世界でしのいできたらしく、本書にはその知見がさまざまに披露されている。とりわけ暴対法の影響で、やくざ社会は経済的に苦しいとされるが、その中でも稼いでいる人は稼いでいるということである。自分の知らない世界、障害かかわらないであろう世界のことであるから、興味深く読んだ。
川崎市全域というか
川崎市川崎区の一部地域について、
HIPHOPやそれに近接するジャンルへのインタビューを通して、その実態をあぶりだそうとした1冊である。実をいうとわたしも
川崎市民なのだが、本書が扱っている地域にはあまり縁がなく、知らないことだらけだった。「不良文化が煮詰まって、にっちもさっちもいかなくなっている」というのが読み終えての感想で、不良文化に親和性が高いHIP HOPを中心に据えたのは正解だったと思う。
山平重樹『最強の経済ヤクザと呼ばれた男 稲川会二代目石井隆匡の生涯』(幻冬舎アウトロー文庫)
ノンフィクションではなく、限りなく実話に近いフィクションで、稲川会二代目会長がその主人公である。名門の旧制中学を暴力沙汰で退学になったあと、愚連隊・
博徒・経済やくざとステップアップしていき、晩年には竹下首相の命運を握るまでにいたる--その波乱万丈の内容が面白いはもちろんのこと、かなり綿密に取材していることが節々にうかがわれる点に好感を抱いた。
鈴木智彦『鈴木智彦の「激ヤバ地帯」潜入記! 』(宝島社)
著者は
暴力団専門のジャーナリストだが、本書はその専門以外の「激ヤバ地帯」に自ら飛び込んでいった取材録である。「激ヤバ地帯」ルポオムニバスといった具合で、どれを読んでも知らない世界のことばかりだった。この本は日曜の夕方、子供たちが騒ぐ中、
サイゼリアで夜ご飯を食べつつ読んでいた記憶があるが、少なくとも食事中に読む内容ではなかったとだけはいっておく。タイトルで判断しろ、といわれればその通りだが(´・ω・`)