nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

水野貴明『Web API: The Good Parts』(オライリー・ジャパン)

Web API: The Good Parts

Web API: The Good Parts

日本人が書いたオライリー本に外れなし(´・ω・`)

Web APIの構築というとWeb業界・Webエンジニアの職分というイメージを受けますが、最近はSIerの領分である業務システムでもWeb APIを利用する場面が増えてきています。営業から聞いた話によると、意外にも金融系でWeb API構築系案件が増えているとか。おそらくFine Techブームの影響でしょうね。それはさておき、本書はWeb APIの「美しい」設計が学べる1冊です。

出来の悪いAPIは保守が大変なこともさることながら、利用する側も大変。とくにパブリックAPIは「利用されてなんぼ」、多くの人に利用されることが競争力の源泉です。Web APIに限らず、外部インターフェイス系は要件定義や設計のフェイズで決めてしまうことが多いと思いますが、その「決める」側の人、より具体的にはアーキテクトと呼ばれる人たちはぜひ読むべきでしょう。もちろんわたしのようなプログラマ、つまりありもののAPIを利用する側にも学びが大きい1冊だということはいうまでもありません。Web APIを設計した人の気持ちになること、いいかえればその設計思想を知ることは、プログラマの成果物に良い影響をもたらすではないでしょうか?

最近の読書メモ(新書編):『ハプスブルク帝国』『応仁の乱』『『宗教国家アメリカのふしぎな論理』

もう年の瀬という事実を直視できない(涙)。とはいえ大量の読書メモを来年には持ち越したくないということで、とりわけ新書に限定して、読書メモをブログ記事にしておきたいと思います。供養みたいなものですね(´・ω・`)

岩崎周一『ハプスブルク帝国

ハプスブルク帝国 (講談社現代新書)

ハプスブルク帝国 (講談社現代新書)

ハプスブルクといえば1200年ごろから第一次世界大戦終結までヨーロッパの一大勢力として君臨し、ヨーロッパ史を語る上では欠かせない存在ではある一方、その長期にわたる活動の入門的な通史が日本ではあまりないということで執筆された1冊だそうです。学校の世界史しかり一般向けの歴史書しかり、「国や地域で区切った通史」もしくは「広範な地域を語るが、ある時代だけ」というものが多く、その活動が長期間かつ広範囲に及ぶハプスブルク帝国の通史は書きづらかったのでしょう。もちろん知的好奇心を喚起されるという点はさることながら、ひとつの歴史物語として面白く読み切ってしまいました。新書にしてはかなり分厚く、かつタイトルがちょぴり地味ではあるものの、昨今の新書界における歴史ブームを考えると、ベストセラーになってもおかしくないぐらいに面白く興味深い1冊だと思います。ちなみに「知的好奇心」という点からすると、個人的には諸身分と支配階級の独特の緊張関係に関心を持ちました。一般的にヨーロッパの王政=絶対王政というイメージが強くありますが、実のところもっと複雑なスキームがハプスブルク帝国を支えていたということを知れたのは意外な収穫でした。

呉座勇一『応仁の乱: 戦国時代を生んだ大乱』

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

2017年後半の読書界は空前の中世・室町時代ブームでしたが、その端緒となったのが本書。室町時代から戦国時代へ移行する最大のきっかけで、義務教育のレベルで必ず学ぶほど著名な歴史イベントにも関わらず、同じような名前がやたらに登場したり、名前にも残らないような戦乱がぐずぐず続いたりと、大変地味でわかりずらい応仁の乱をさまざまな研究成果をもとに読み解いていきます。旧弊な室町時代を終わらせ、実力主義の戦国時代を到来させたある種の革命として語られることが多かった応仁の乱を、そのような唯物史観的エポックメイキングではなく、同時代人の観点から語ろうとしたことに本書のユニークな面があり、ベストセラーになった要因があると思いました。

森本あんり『宗教国家アメリカのふしぎな論理([シリーズ]企業トップが学ぶリベラルアーツ)』

反知性主義』が話題になった著者によるビジネス書、というよりビジネス教養書です(ちなみに『反知性主義』はわたしも読んでブログにしています)。はっきりいうと、学術的興味や深みという点では『反知性主義』に軍配が上がりますし、内容的に重複していることも多い(ビジネス書なのでそんなものといえばその通りですが……)。しかし本書は「アメリカに土着化したキリスト教」を語るにあたって、いわゆる「トランプ現象」、すなわち科学的経済的文化的に世界の最先端を行くアメリカがなぜドナルド・トランプという問題の多い男を大統領に選んでしまったのかという点をメインテーマのひとつに据えています。ここに同じく「アメリカに土着化したキリスト教」をテーマとする『反知性主義』との違いを感じますし、社会科学的問題が単なる机上の空論ではなく、現在進行形であることを改めて実感できました。

nekotheshadow.hatenablog.com

最近の読書メモ(小説編):『箱根山』『失われた世界』『時間に忘れられた国』『死の接吻』

最近は小説の読書量が減っています……。これはわたし個人だけかもしれませんが、仕事が忙しく残業続きで疲れていると、フィクションを読むのが体力的・気持ち的につらくなります。とはいえ全く読んでいないというわけでもないので、その数少ないうちからとりわけ面白かった作品については、簡単な読書メモを残しておきたいと思います。

獅子文六箱根山』(ちくま文庫)

箱根山 (ちくま文庫)

箱根山 (ちくま文庫)

ここ最近ちくま文庫獅子文六をプッシュしているらしく、書店のちくま文庫コーナーに行くと必ず平積みしています。要するにその戦略にまんまと乗せられたというわけです(´・ω・`) 昭和の大衆小説らしいダイナミックな話運び、ともすれば荒唐無稽とも言いたくなるようなプロットもさることながら、執筆当時の箱根山をめぐる風俗描写が非常に興味深く、飽きることなく最後まで一気に読んでしまいました。大衆小説は時代が進むにつれて風化しがちですが、本作がそうなっていないのはおそらく「イエの因縁に引き裂かれた若い男女の秘めた恋愛」という普遍的なテーマを作品の中心に据えたからかと思います。

アーサー・コナン・ドイル『失われた世界』(光文社古典新訳文庫)

ドイルといえばシャーロック・ホームズであり、推理小説の大家というのが世間一般の認識ですが、歴史小説やSF分野にも優秀な作品を残しています。本作は俗に「チャレンジャーもの」とか「チャレンジャー教授シリーズ」とか呼ばれるSF&冒険小説シリーズの第1作目にあたるもので、奇人チャレンジャー博士を中心とした一団がいける恐竜を探してアマゾンの奥地へと向かって行きます。冒険と恐竜は男の子のロマンだよね(´・ω・`) 科学的考証の部分はさておいても、18世紀にこれだけのロマンあふれる冒険譚をかけてしまうという点で、ドイルは唯一無二の天才であったことを思い知らされます。

エドガー・ライス・バローズ『時間に忘れられた国(全)』(創元SF文庫)

時間に忘れられた国 (創元SF文庫)

時間に忘れられた国 (創元SF文庫)

『火星のプリンス』や『ターザン』シリーズで知られる、エドガー・ライス・バローズ晩年の作品です。生物進化に取り残され、恐竜や原始人が多数住む未開の地を冒険するという点で、前述の『失われた世界』に近いものがありますが、『失われた世界』に比べると本作はやや乱暴というか、征服主義的・植民地主義的な側面が多分に押し出されています。とはいえ冒険と恐竜は男の子のロマン(´・ω・`) 面白く読み切ってしまいました。

アイラ・レヴィン『死の接吻』(ハヤカワ文庫)

いわゆる倒叙もので、推理小説・探偵小説というよりはサスペンスあるいは犯罪小説よりの作品でした。「倒叙」すなわち読者が犯人を知っているスタイルの面白さのひとつは、犯人が追い詰められていく様子を眺めること、そして犯人を知っているがゆえにまるで自分が追い詰められていくかのようなスリルが味わえることですが、本作ではそのスリルを十二分に楽しむことができます。また本作の「犯人」は自らの立身出世のために女をだまして、犯罪に手を染めるのですが、その様子と過程が生々しく描かれていることもあってか、ページをめくる手を止められずについつい夜更かししてしまうというたぐいの作品でした。

最近読んだノンフィクション(反社編): 『山口組三国志』『武闘派』『大阪府警暴力団担当刑事』

読書とその記録・感想をブログに残すことが趣味なのですが、その「読書記録をブログに残したい本」のリストを整理していたところ、反社会勢力(要は暴力団)をテーマにした本がいくつか見つかったので、まとめてブログ記事にすることに。というわけで、その手のジャンルが苦手な場合は閲覧注意です(´・ω・`)

溝口敦『山口組三国志: 織田絆誠という男』(講談社)

山口組三国志 織田絆誠という男

山口組三国志 織田絆誠という男

hontoという丸善ジュンク堂(?)が主催しているオンライン書店サイトに登録しているのですが、このサイトのメールマガジンがやたらに本書を進めてくるため、ついつい買って読んでしまった次第(´・ω・`) 日本最大の暴力団山口組から神戸山口組が分裂、その後まもなく神戸山口組が分裂し任侠山口組が成立したというニュースは世間を騒がした、というより現在進行形で騒がせています。本書はこの分裂騒動の第3極・任侠山口組のトップのインタビューを中心として、この分裂騒動を引き起こすまでの極道史を解説しています。要は金と利権とメンツが複雑に絡み合ってこの分裂騒動が起きていると筆者はみるのですが、これらを原因としたもめごとは一般社会でも頻繁に起きており、やくざ社会も一般社会と同じというか、裏社会は表社会の合わせ鏡でしかないことを感じます。あとは本書を読んでいると、作者がこの「任侠山口組のトップ」にずいぶんと肩入れしているようにも見えるのですが、ジャーナリストとしてこれでいいのかしら(´・ω・`)

溝口敦『武闘派: 三代目山口組若頭』(講談社+α文庫)

武闘派 三代目山口組若頭 (講談社+α文庫)

武闘派 三代目山口組若頭 (講談社+α文庫)

前述の『山口組三国志』を丸善ジュンク堂で買ったからか、hontoが本書を推薦してくるようになったため購入(´・ω・`) 山口組がこれだけ巨大な組織になったのは3代目組長田岡一雄の時代であることはよく知られていますが、本書はその時代の後期に若頭(組のNo.2)であった山本健一という人物の一代記になります。たいへんに「男らしい」というか、ある種の「極道像」を体現したような人物だったようで、よくいえばアンチヒーローにも似た感触を受けました。現代でもファンが多い人物だそうですが、それも納得できる部分がありました。

森功大阪府警暴力団担当刑事: 捜査秘録を開封する』(講談社+α文庫)

これもhontoからの推薦(´・ω・`)この手の本を紹介するhontoもhontoだが、それに乗せられて買って読んでしまうわたしも悪い(´・ω・`) 本書は大阪府警の捜査四課(=暴力団対策課)のお仕事紹介――ではなく、世間を騒がせた事件の裏で暴力団がどのように関与していたのかを明らかにしたものになります。どこまで真に受けるべきか、判断に困る部分ではありますが、本書の内容がすべて本当であれば、表社会のエスタブリッシュメントが裏社会と極めて密接な関係を持っているということになりかねません。まあ話半分に読んでおくべきなのかもしれませんね(´・ω・`)

最近の読書記録(宗教編):『キリスト教史』『『ふしぎなキリスト教』と対話する』『ごまかさない仏教』『仏教思想のゼロポイント』

読書とその感想をブログに書き散らすだけが趣味なのですが、最近は仕事が忙しくてさぼりがち(´・ω・`) ただあまりにもさぼりすぎたせいか、ブログに読書メモとして残しておきたい本のリストがたまりにたまってきたので、まずは宗教関連についてリストを消化していきたいと思います。

藤代泰三『キリスト教史』(講談社学術文庫)

キリスト教史 (講談社学術文庫)

キリスト教史 (講談社学術文庫)

日本への布教を含めた、キリスト教の歴史を一望できる1冊です。キリスト教の通史と名を打つ本はあまたありますが、そのほとんどが初心者向けの概要にとどまっているか、あるいはキリスト教の特定のジャンルに偏っているかのどちらかで、本書のようにキリスト教に関連するあらゆる学問領域を時間を軸として網羅しつつ、そのくせ初心者向けの簡単な記述になっていないというのは珍しいのではないでしょうか。全750ページ超、お値段2100円(税抜き)と文庫本にしては「お高い」部類ではあるものの、その価値は十分にあるように感じられます。

来住英俊『『ふしぎなキリスト教』と対話する』(春秋社)

『ふしぎなキリスト教』と対話する

『ふしぎなキリスト教』と対話する

数年前に『ふしぎなキリスト教』という新書がベストセラー、というより宗教書・新書というジャンルにしてはよく売れたということが話題になりましたが、本書はその関連書といえるでしょう。このベストセラーの間違いを指摘したり、あるいは賛同してみたりしつつ、キリスト教の「教え」をカトリックの神父がやさしく啓蒙していきます。ちなみに『ふしぎなキリスト教』を読んでいないわたしが本書を読んだのは、以前に読んだ同著者の『キリスト教は役に立つか』という本が面白かったから(ブログ記事にもしました)。著者が一般向けの執筆をつづけるのは、日本の知識人・知識階級におけるカトリックキリスト教の地位を上げることだそうですが、本書はその目的を十分に達成しているように思われます。

佐々木閑宮崎哲弥『ごまかさない仏教:仏・法・僧から問い直す』(新潮選書)

ごまかさない仏教: 仏・法・僧から問い直す (新潮選書)

ごまかさない仏教: 仏・法・僧から問い直す (新潮選書)

打って変わって仏教書(´・ω・`) 本書は原始仏教を信じる(?)ふたりによる、仏教や仏説をめぐる対談書です。日本人が仏教と聞くと「平安仏教」「鎌倉仏教」「葬式仏教」というワードを想起しがちですが、それらは過剰に日本化されゆがめられた仏教であり、釈迦が自ら説いて実践した教えはもっとラディカルでユニークなものであるということを教えてくれます。いわゆる入門書の類ではあるものの、仏教の面白さの端緒が知れたような気がしますし、これだけ論理的で「ぶっとんだ」宗教が日本の知識層において軽く見られているのはやや不思議に感じられました。

魚川祐司『仏教思想のゼロポイント:「悟り」とは何か』(新潮社)

仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か

仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か

前述した『ごまかさない仏教』が面白く、仏教に関心を持って本屋をうろちょろしていたときに見つけた、というより『ごまかさない仏教』に並んで平積みされていたので買った記憶があります。『ごまかさない仏教』に似て、本書も原始仏教上座部仏教に関する1冊ですが、『ごまかさない仏教』がやや教科書的・学校の講義的な側面を持っていたのに対し、本書はその方面の記述が少なめで、仏教徒が信じていることあるいは実践していることの本質・核心を言語化し、仏教徒ではない読者に伝えています。タイトルにある「ゼロポイント」、すなわち悟りの境地とは何かが平易に解説されており、仏教に対する知的好奇心が刺激されたように思います。

下佐粉昭『即戦力のDB2管理術:仕組みからわかる効率的管理のノウハウ』

即戦力のDB2管理術 ?仕組みからわかる効率的管理のノウハウ

即戦力のDB2管理術 ?仕組みからわかる効率的管理のノウハウ

少し前に炎上中のDb2保守案件にトラブルシューティングとして投入されたことがあり、そこでは「大変な目」(泣)にあったのですが、そのことを話した先輩から推薦されて買った1冊です(´・ω・`) 出版は2011年と技術書としてはやや古い部類ですが、しかしそれを差し引いても読む価値がある良書だと思います。

Db2といえば商用データベースとしては世界的なシェアをほこり、ミッションクリティカルな用途にも十分耐えうる優秀な性能を持つ一方、Oracleなどに比べるとオープンな情報が少なく、技術者や保守要員も集めづらいことでよく知られています(少なくともわたしの観測範囲では)。IBMとしては情報をクローズにすることで競争の源泉としたいのでしょうが、そんなことはお構いなしに投入される現場のSEにとっては迷惑な話です。

本書はそんなDb2の管理術、すなわち保守維持フェイズについて「基本のキ」から学べてしまいます。「基本のキ」としたのは、本書は「こういう問題が発生した場合はこういう対策を取りなさい」というようなQ&AやTipsの羅列ではなく、Db2DBMSの基本的な仕組みから解説しているから。つまり「DBとはこういうもので、そのためにこういう問題が発生するから、こういう対策を取りなさい」という説明が中心であり「Db2に関心がある」「なぜかDBAとしてプロジェクトに投入された」「Db2の保守維持で困っている」という人だけでなく「そもそもDB・DBMSとはどういうものかを知りたい人」にもおすすめできる1冊だと思います。

ここまで「保守維持」というワードを強調してきましたし、事実「保守維持」フェイズにおいて本書が役立つことは言うまでもないのですが、開発フェイズにおいても本書を傍らに置いておきたい。最近はDBMSの機能向上が著しいからか、DBの運用設計というのはないがしろにされがちで、そのつけが本番障害として現れる、つまりDBを起因としてプロジェクトが火を噴くというのもよく聞く話です。要はDBの運用設計は開発フェイズやさらに上流の要件定義フェイズできちんとなされるべきであり、本書から提供される知識はその運用方針を決めるという段階でも多いに役立ちます。

まあそんなわたしが現在在籍しているプロジェクトはかなり巨大なデータ量を扱うにもかかわらず、DBAがいないという(´・ω・`) 後々トラブルになりそうでござる(´・ω・`)

最近読んで面白かった新書: 『珈琲の世界史』『旧約聖書の謎』『アウグスティヌス』『観応の擾乱』『トラクターの世界史』

タイトル通り、最近読んで面白かった新書について、簡単な感想を書いておきます(´・ω・`)

旦部幸博『珈琲の世界史』 (講談社現代新書)

珈琲の世界史 (講談社現代新書)

珈琲の世界史 (講談社現代新書)

同じ筆者の『コーヒーの科学』(ブルーバックス)が面白かったこともあり購入。『コーヒーの科学』が理系本とすれば、本作は文系よりで、コーヒーが発見され広まるまでの歴史を大づかみすることができます。全部で250ページほどと比較的薄めの新書ですが、コーヒをめぐる文化史や世界情勢、スターバックスの成り立ちや現代コーヒー事情まで手広くキャッチアップしており、とても勉強になる1冊でした。知らずに飲むより知って飲むほうがおいしく感じられそうですね――といいつつ最近はマックスコーヒーばかり飲んでしまう(´・ω・`)

長谷川修一『旧約聖書の謎: 隠されたメッセージ』(中公新書)

旧約聖書の謎 - 隠されたメッセージ (中公新書)

旧約聖書の謎 - 隠されたメッセージ (中公新書)

これも同じ筆者の『聖書考古学』(中公新書)が面白かったので、購入したものになります。『聖書考古学』に比べると、やや雑多にトピックをまとめた印象ですが、しかしそのどれも興味深く、楽しく読みました。本書を読むと旧約聖書の史実性はかなり怪しい。しかし本書および筆者はあくまで客観的で科学的な態度を維持し続ける、つまり妙な神学論争や無神論を講じ始めたりしない、その冷静さは個人的には少し見習いたいところです(どんな感想だ)

出村和彦『アウグスティヌス:「心」の哲学者』(岩波新書)

アウグスティヌス――「心」の哲学者 (岩波新書)

アウグスティヌス――「心」の哲学者 (岩波新書)

アウグスティヌスといえば、カトリックプロテスタントあるいは正教会などその宗派を問わず、偉大なる教父として尊敬されており、また高校の世界史や倫理などで学ぶことも多い人物です。本書はその偉大なる教父の思想をとりわけ人物史を手掛かりとして明らかにしようとします。単にアウグスティヌスが残した書物を読み解くだけではなく、どのような人生を歩んだのかを主軸に置くアプローチ、すなわちテクスト論とは真逆のアプローチをとることで、その思想の理解に深みが出るような気がします。

亀田俊和観応の擾乱: 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い』(中公新書)

正直なところ本書のタイトルを見るまで「観応の擾乱」というワードすら忘れていました(´・ω・`) 高校日本史の教科書的価値観からいえば、やや印象の薄いこの騒乱が室町幕府の基本的な軍事行政制度を形作るきっかけであったということが本書には示されています。やはり教科書的価値観からすると、鎌倉時代南北朝時代に比べてやや武断的な印象を受ける室町時代の制度設計。その端緒を「観応の擾乱」から紐解いていくわけです。ちなみに昨今は室町時代ブームの読書界。本書はそのブームに乗っかる意図もあったと個人的には邪推しています(失礼)。

藤原辰史『トラクターの世界史: 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』(中公新書)

トラクターという技術がどのように発展したのか。そしてその発展は人々や社会にどのような影響を与えたのか。いわばトラクターをめぐる文化史を学ぶことができる1冊です。第3次産業に従事する現代人はどうしても「農作業が楽になったぜ。やったー」という単純な構図を思いがちですが、実はそうではない。トラクターと人間はここで簡単に表現できないようなアンビバレントな関係性を保ちながら発展してきたということを本書から学びました。