ここ2-3週間で読んだ新書のうち、面白かったものや個人的な関心を書きたてられた4冊を紹介します(´・ω・`)
夏目琢史『井伊直虎: 女領主・山の民・悪党』(講談社現代新書)
- 作者: 夏目琢史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/10/19
- メディア: 新書
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大河ドラマで話題の井伊直虎について、その個人史というよりはむしろ、大きな文明の流れや社会の変動あるいは経済の変動に結びつけながら論じた一冊です。資料を緻密に読み解いた結果を披露するというよりはむしろ、ある種の仮説を提示するという側面が強いため、読む人にとっては大言壮語的に感じられるかもしれませんが、わたしはその大言壮語的な側面を楽しく読みました。本書に提示される仮説が事実かどうかはさておき、論考としてはとても面白いと思います。
横手慎二『スターリン: 「非道の独裁者」の実像』(中公新書)
- 作者: 横手慎二
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/07/24
- メディア: 新書
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スターリンといえば、ライバルや逆臣的な部下を片端からシベリアやら絞首台やらに送り込むなど、本書の副題にもある通り「非道の独裁者」というイメージが強くあります。一方でソ連を経済的軍事的大国にたたき上げ、WW2では攻め入ってきたナチスドイツを追い返し、連合国を勝利に導くなど、政治的才能に恵まれていたことには疑いがありません。この奇妙なギャップを理解するにはスターリン個人のひととなりを知る必要があり、本書はそのひとつの手掛かりになりました。わたしの個人的な感想ですが、スターリンは権力闘争を勝ち抜き、その結果手に入れた権力の座を維持し続ける天才だったように感じられます。
佐藤彰一『贖罪のヨーロッパ: 中世修道院の祈りと書物』(中公新書)
- 作者: 佐藤彰一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/11/16
- メディア: 新書
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6-12世紀のフランスやアイルランド社会を修道院という制度を通して読み解く――というジャンル・着眼点的には少しニッチな内容を扱った新書です。キリスト教に関する本や文学作品を読むと、民衆や市民社会とキリスト教の関係が問題になる、言い換えれば在野のキリスト教がテーマにされることが多い中、俗世から離れて神に祈り続ける人々やその歴史について知れたことはとてもよかったと思います。Amazonなどを見ていると本書は続き物のひとつ、つまり本書には上巻のような存在の新書があるそうなので、機会があれば読んでみたいですね。
徳善義和『マルティン・ルター: ことばに生きた改革者』(岩波新書)
- 作者: 徳善義和
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/06/21
- メディア: 新書
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ルターといえば宗教改革、そしてその宗教改革が社会や経済や歴史にどのようなインパクトをもたらしたのかという点については、高校世界史で学習したり関連する書物を読んだりしたのですが、肝心のルターに関してはまるで何も知らない状態でした。本書はルターの個人史を概説しつつ、たとえば聖書の聖句や民衆への説教など、彼が「ことば」とどのようにかかわり戦ったのかという点に着目しており、とてもユニークな視点であると感じられました。