nekoTheShadow’s diary

IT業界の片隅でひっそり生きるシステムエンジニアです(´・ω・`)

山本陽平『Webを支える技術: HTTP, URL, HTML, そしてREST』

Webを支える技術 -HTTP、URI、HTML、そしてREST (WEB+DB PRESS plus)

Webを支える技術 -HTTP、URI、HTML、そしてREST (WEB+DB PRESS plus)

 

「文化的な最低限の生活」を送るうえでは欠かせない情報インフラとなったインターネット。本書ではその「古くて新しい」インターネットを構成する技術が解説されています。

本書のよいところは大きくふたつ挙げられます。まずは「網羅性」。実のところインターネットはさまざまな「規格」の集合体です。いいかえれば種々の「決まり事」がまずあって、技術者がその「決まり事」を律儀に実装することにより、広大なインターネットは成立しています、本書はその「規格」あるいは「決まり事」を網羅的に扱っており、一読し終えた後もリファレンスとして利用できる強みがあります。

本書のもうひとつの長所は「歴史性」にあると考えます。インターネットやそれを支える「規格」は統一的な国家権力ではなく、いわば「草の根」で定められてきたものがほとんどであり、そのうえ必ずしも「規格」が先行しているとは限りません。いわゆるデファクトスタンダード――つまりまず「実装」が先にあり、それが広まったために、後々になって「規格」へと清書されるということが多々あります。したがってインターネットを支える技術を知るためには、その「企画」「決まり事」がどのように定められたのかという歴史を知ることが必要不可欠となります。本書はその部分についても懇切丁寧に解説が加えられており、その点で単なるリファレンス本とは一線を画しています。


不満をあげておくとすれば「内容がやや古い」ということでしょうか。とくにHTTP/2関連の記述はほとんどありません。ある程度デファクトスタンダードとして固まりつつあるので、このあたりについても解説があればよかったと感じます。もっとも本書は2010年出版の本なので、ないものねだりかもしれませんが。ただ重版を重ねているので、どこかのタイミングで加筆修正などがあってもよかったのではないかと思ったりもします。

hhkbを買った

nekotheshadow.hatenablog.com

少し前に高級キーボードを探しているということをブログに書いたのですが、このたびついに買ってしまいました。買ったのは「Happy Hack Keyboard Professional JP」の白色。業界用語(?)でいうところの"HHKB"の日本語版になります。お値段はおよそ2万円。池袋にあるビックカメラのパソコン館まで遠出をして買ってきました。

PFU Happy Hacking Keyboard Professional JP Type-S 白(日本語配列)

PFU Happy Hacking Keyboard Professional JP Type-S 白(日本語配列)

HHKBを買うまではあちこちの家電量販店にいって、さまざまなキーボードを試して回っていたのですが、打鍵感の点でHHKBが一番の好みでした。軽いのはもちろんのこと、浅すぎないキーストロークが非常にすばらしい。メカニカルやメンブレンとも違う、独特の打鍵音も気に入っています。2万円という価格は正直安いものではありませんが、それを上回るパフォーマンス・クオリティで個人的には大満足です。

ところで以前の記事では「冬のボーナスが出たら買おうかしら」という結論でしたが、結局ボーナス以前に買ってしまいました。理由は簡単。「残業代という臨時ボーナスが入ったから」。わたしが勤務している会社(SIer)では「残業代という制度は存在するが、どれだけ残業しても残業代はつかない」という不思議な状況だったのですが……今月からなぜか残業代がつくように。労働組合あたりから横やりが入ったのか、それとも電通の過労死事件に影響されたのか。真の原因はわかりませんが、まあもらえるならありがたくもらっておかないと損です。正直なところ「どんびき」するぐらいの額の残業代が入ったので、ついついHHKBを買ってしまったのでした。


IT技術者のくせにHHKBのUS配列を買わなかったのは「びびってしまった」というのが正直なところ。さすがに矢印キーがないのはちょっと……。あとは日本語の文章を書く上ではやはり日本語配列のほうが楽なような気がします。それに会社のPCは日本語配列なので、US配列に慣れてしまった場合、仕事に支障をきたす可能性が高く、今回は日本語配列のHHKBを買うという結論になりました。HHKB原理主義者の人には心より謝罪を申し上げます。

ビックカメラのレジに並びながら、自分の好きなキーボードで仕事ができる環境に転職するという考えが浮かんだのは内緒(´・ω・`)

理想のキーボードを探す旅に出ています。

最近はメインPCのDynabookにサンワダイレクトの安物キーボードをつないで使っているのですが、最近このキーボードに不満があります。安物(2000円ぐらい)ということもあって、長時間使用していると指先が痛くなってくるのです。これでもDynabook付属のキーボードを使うよりまし*1と安物キーボードでタイピングしてきたのですが、不満は日に日に積もる一方。

そういうわけで最近は「理想のキーボード」を探すべく、家電量販店のキーボードコーナーをうろうろする生活を送っています。ちなみにわたしがキーボードに求める要件は以下の通りです。

  • どちらかといえばコンパクトなタイプが好み。
    • 手が小さいのであまり大きいとつらい。
    • 少なくともテンキーはいらない
  • メカニカルキーボード希望だが、メンブレンでもOK。
    • 単に「メカニカルキーボード」という響きにあこがれているだけ(´・ω・`)
  • 押した感覚/押し返される感覚が強いほうが好み。
    • Mac系の「浅い」キーボードはだめ。
  • 音はうるさくてもうるさくなくても可
    • どうせ家で使うだけなので……。
    • 自分の使いたいキーボードが使えるような会社じゃないよ(業務系SE)
  • 全角/半角をしょっちゅう切り替えるタイピングスタイルなので、切り替えキーは必須。
  • JISキーボードが希望。
    • プログラミングはともかく、日本語タイピングの面ではJISキーボードのほうが優れている気がする。
  • Enterキーは大きくないとやだ。
  • 十字キーは必須。
  • ctrlキーが左下にあって、その横にFnキーがあるタイプがいい。
    • 左からFn→Ctrlになっているタイプは避けたい。
  • 予算は3万円ぐらいまで。
  • 有線/無線/Bluetoothは気にしない。

書き出してみると要求事項が意外と多いことに驚きます(´・ω・`)

さて家電量販店でいろいろ触ってみた結果、今のところの候補は次の3つぐらいですかね。

  1. HHKBの十字キー付きタイプ
    • 小型で軽いのはGood。タイプした感覚&音がかなり好み。
    • 半角/全角の切り替えキーがないのは残念。あとaの横にCtrlがあるのも慣れなさそう。
  2. Majestouchのテンキーレスタイプ
    • ちょっと重たいが、小型。打った時の音もかなり好き。
    • 打鍵感はHHKBのほうが好み。あと見た目が気に食わない
  3. Microsoftの薄型キーボード
    • メンブレンの中では一番好み。安いのもNice。
    • ただやっぱりメンブレンなのが気になる。またMacに移行した場合、MacBookMicrosoftのキーボードをつなぐというかなり間抜けな絵になりそう。

とりあえず冬のボーナスが出るまではいろいろ悩みたいと思います。急いで買うほどのものではないですし、サンワサプライもこれはこれでいいものですし(優柔不断)


  • それにしても最近の家電量販店はPC&PCサプライの扱いが小さい気がします。最近はやはりスマホタブレットにおされているのかしら。
  • とりあえず自分の好きなPCやキーボードで仕事をさせてくれる会社に転職するのが先のような気がしてきた(´・ω・`)

*1:3年前に買った時はなかなかよかったのですが、長時間利用する間にかなりへたってしまい、サンワサプライのキーボード以上に手が疲れます

松尾豊『人工知能は人間を超えるか: ディープラーニングの先にあるもの』

実をいうと人工知能機械学習に関心は少ない。もっともまったくなかったわけではないのだ。わたしは今年からPython3を触り始めているのだが、そのきっかけは機械学習人工知能だった。もっともPython3で遊んでいる間にPython3という言語自体の「出来の良さ」(あるいは「出来の悪さ」)が気に入ってしまい、機械学習人工知能への興味関心が吹き飛んでしまったのだが。

閑話休題。本書の筆者は日本有数の人工知能研究者のひとりである。そのため本書の記述はきわめて現実的である。人工知能とよばれる存在が今現在の世界で何ができて、何ができないのか。人工知能の研究史を交えながら、人工知能の希望と限界について地に足の着いた議論が展開されている。「夢がない」というと言い過ぎかもしれないが、そこらのITコンサルくずれが語る夢物語とは一線を画しており、読む価値があると考える。また全般に平易な記述であり、入門書あるいは啓発書としてのレベルも高いと感じた。


  • よかった点

    • 人工知能の研究者による入門書であり、記述が厳密である。また人工知能/機械学習とひとくくりにされやすい技術が詳細かつ平易に解説されている。
  • 悪かった点

    • 自然科学の立場から書かれているため、社会的な視点がやや弱いように感じられる。人工知能機械学習が社会に与える影響やインパクトについて書かれてはいるもののややおざなりであり、この程度であればなくてもよかったように思う。

石動竜仁『安全保障入門』(星海社新書)

安全保障入門 (星海社新書)

安全保障入門 (星海社新書)

筆者はゆっくり魔理沙のアイコンが有名な軍事ブロガーで、わたしが普段技術情報の収集に利用している「はてぶ」でも、筆者の記事がホットエントリーに上がっているのを見ていました。要するにミーハー精神でこの新書を読んだわけですが、なかなかよかったです。

安全保障に関する本や新書を読むと、かなりの確率で「俺の安全保障論」にぶち当たります。つまり安全保障一般を語るようなタイトルでありながら、実際は筆者の安全保障論が開陳されるだけという本がかなりあるわけです。実は最近そういう羊頭狗肉本を読んでしまい、ちょっとげんなりしてしまうということがありました(余談)。

閑話休題。しかし本書は「俺の安全保障論」ではありません。安全保障に関する視点や論点を多角的に、かつきわめて客観的に紹介しています。いってみれば安全保障の教科書です。『安全保障入門』というタイトルを名乗るにふさわしい内容だと思います。また筆者は公平で客観的な記述を志す一方、「人間が執筆する以上、偏りは避けられない」ということも表明しており、ここにわたしは好感を持ちました。

最近読んだ4冊: 『コーヒーの科学: 「おいしさ」はどこから生まれるのか』『研究不正: 科学者の捏造、改竄、盗用』『平田篤胤: 交響する死者・生者・神々』『ガルブレイス: アメリカ資本主義との格闘』

タイトルが長い(´・ω・`) ここ2-3週間で読んで面白かった本を4冊紹介します。ジャンルはばらばらですが、どれも最近出版されたばかりの新書なので手に入れやすいと思います。

旦部幸博『コーヒーの科学: 「おいしさ」はどこで生まれるのか』(ブルーバックス)

タイトルだけ見ると「おいしいコーヒーの淹れ方を科学的に解明する!」というような内容を想像しますが、実際は「コーヒーに関する百科事典」というほうが正確でしょう。とりわけ筆者が大学の理系の教授ということもあり、自然科学的な内容が充実しています。それ以外にもコーヒーの歴史や淹れ方の種類など、さまざまな内容が網羅的に掲載されており、勉強になった1冊でした。

黒木登志夫『研究不正: 科学者の捏造、改竄、盗用』(中公新書)

研究不正 - 科学者の捏造、改竄、盗用 (中公新書)

研究不正 - 科学者の捏造、改竄、盗用 (中公新書)

科学者の研究不正について、さまざまな事例が集められた1冊です。ひとことに研究不正といっても様々な種類があり、性善説に基づき運営される科学コミュニティの難しさが伝わってきます。また事例紹介に際して、筆者の個人的なエピソードが開陳されることが多々あり、ユーモアを感じさせます。

吉田麻子『平田篤胤: 交響する死者・生者・神々』(平凡社新書)

平田篤胤: 交響する死者・生者・神々 (平凡社新書)

平田篤胤: 交響する死者・生者・神々 (平凡社新書)

左翼大学として有名な国立大学(文系)に通っていたころ、大学の教授たちから発せられる国学者のイメージは悪いものでした。国粋主義的であり、排外主義的であり、あるいは日本を第2次世界大戦に導いた元凶であり……うんぬん。なかでも平田篤胤はやり玉に挙げられやすい国学者だったと記憶しますが、本書によってイメージは覆ったような気がします。本書の解く平田篤胤の思想はどこか雄大さやおおらかさを感じさせ、平田国学という語から想起されるネガティブな印象とはずいぶんと違うものでした。

伊藤光晴『ガルブレイス: アメリカ資本主義との格闘』(岩波新書)

ガルブレイスは大学でアメリカ文学を学んでいたころに1冊読んだきりでした。経済学者というよりは社会学者という印象をそのときは受けたのですが、本書によればそれは間違っていなかったようです。ガルブレイスには、空理空論だけではなく、常に実社会と関係を持ちながら経済という営みを解き明かそうとする態度があり、その態度こそがガルブレイス=社会学者という「誤った」印象を抱かせたのでした。

上田勲『プリンシプルオブプログラミング: 3年目までに身に着けたい一生役立つ101の原理原則』

よいソフトウェアとは何か。あるいはよいソースコードとはどのようなものか。そうした原理原則は主に実戦と経験の中で積み重ねられてきた。もちろんよいソフトウェア/ソースコードを科学的に解明しようとする営みはあり、それがある程度の実績を上げていることは間違いない。しかし有名無名のプログラマたちが日々の実践の中で蓄積してきた知識がなによりも役立つということも事実なのである。

本書は全世界に散らばるプログラマたちが思い思いに積み上げてきたベストプラクティスをひとまとめにしたものである。タイトルにもあるとおり、101個の原理原則に簡単な解説が添えられ、ちょっとした辞書として機能している。あるいはソフトウェアを制作するうえのクックブックといってもいいかもしれない。

本書の面白いところは筆者の思想が見えないところだろう。ソフトウェア技法に関する本はたいてい、その筆者の思想が開陳されている。アジャイル開発がベスト、あるいはウォータフォールに立ち返るべきうんぬん。しかし本書はそれがない。古今東西のソフトウェア技法をとにかく収集&整理しているだけであり、ここが本書の何よりの特徴といえるだろう。


  • よかったところ
    • 全部入り! 古今東西のソフトウェア開発技法が整理収集されている。解説も特定の技法に偏ることもなく、フラットな記述に専心している。
    • それぞれの項目ごとに参考文献が提示されている。要するにその項目の"元ネタ"であり、本書の辞書性あるいは百科事典性を向上させている。
  • 悪かったところ
    • 実際のソースコードが示されていない。この点については筆者は断りを入れているものの、やはりソフトウェアについての本である以上、具体的なソースコードがあってもよかった。
    • 本書の狙いかもしれないが、項目ごとの独立性が強く、関係性が見えずらかった。たとえば項目ごとに「参照すべきほかの項目」の一覧があれば、なおよいように感じられた。